ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

京都御苑自然観察会

外出機会増やし心の支えに
車いす対応、介助法も説明(2017/05/22)


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観察会のメンバーからキノコなどの説明を受けながらユニバーサルコースを巡る参加者(京都市上京区の京都御苑)

 京都市の中心部、広大な敷地内には多くの木々が生い茂る上京区の京都御苑。御苑内には560種以上の植物が群生し、四季折々の自然を楽しむことができる。その西側にユニバーサルコースとして舗装された道があり、車いす対応のトイレも点在する。

 車いすを使用する人たちに自然を親しんでもらう「京都御苑自然観察会」が、月に1度開かれている。観察会は「京都御苑きのこ会」世話役の佐野修治さん(66)が、ユニバーサルコース内の草花や自生するキノコなどを観察し、自然に触れてもらおうと2013年10月から始めた。

 開催はこれまでに90回を超え、約300人が参加した。主だった参加者は70、80代の高齢者が多いが、時にはがん治療を受けている人の参加もあるという。参加者は草花やキノコなどの説明を受け、観察しながらコース内を回る。砂利道や段差のある所では、安全に車いすを押せるように介助の仕方も説明している。参加者からは「日々の生活に笑顔が増えました」と感謝の言葉も寄せられる。

 観察会は佐野さんの仕事が休みの日に、午前と午後に分けて5組ずつを受け付けている。申し込みの多い時は、介護福祉士の資格を持つ友人の見秀義さん(56)や職場の同僚らに応援を頼んで対応している。また依頼を受ければ観察会とは別に車いす介助の講習も行っている。参加者が急に都合が悪くなった時に迅速に対応できるように会の規模を大きくせず、気心の知れたメンバー数人で活動を行っている。

 佐野さんは11年にアパレルメーカーを定年退職した後、一念発起し介護の資格を習得、ケアワーカーとして老人福祉施設で働き始めた。車いすの人に安心して参加してもらいたいと16年に国家資格の介護福祉士も取得した。観察会を始めたのは、今の職場で高齢者と会話する中で、「車いすでの生活になって外出の機会がなくなった」「外へ出る気力が薄れた」―などの思いを抱えている人が多いことに気づいたからだ。

 4月17日に開かれた観察会には2組が参加。中立売北休憩所前に集合し、サトザクラやヤマブキ、ヒメオドリコソウなどを観察しながら近衛邸跡へ。しだれ桜などを観賞し、集合場所の休憩所まで戻った。右京区の60代女性は「2年前に悪性リンパ腫の治療の副作用で車いすでの生活になりました。それ以来、外出することがおっくうになっていました。自然に触れ生きる喜びを得られました」と、夫婦で参加。祖母の介助の勉強になればと参加した左京区の40代女性は「入院中の祖母は外出する機会が少なく、たまの外出を特別なものにしたくて参加しました。車いす操作の勉強になり、季節のいい時に祖母を連れてくるつもりです」とうれしそうに話す。

 佐野さんは「車いすで散策できるコースがあることはまだまだ知られていないようです。もっと多くの人に参加してもらい、自然と触れ合うことで生きる力を得てもらいたい」と、これからの活動に前向きだ。

京都御苑自然観察会
2013年10月から、車いす利用者にも御苑内の自然に親しんでもらおうと活動を始める。 月1回観察会を行う。
問い合わせは同会携帯電話080(1497)3995。