京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●広がる 地域の輪 NPO法人青空ふれあい農園・ハーブ倶楽部元気に年重ねて介護予防も
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「農園では毎夏、インターンシップの大学生たちの働く姿が見られる。立っているのは理事長の久保末子さん(8月23日) |
「澄んだ空気の広い農園で、中高年者が作物を育てながらいきいきとして年を取り、若干の報酬も受け取れる福祉の形をつくりたい」。青空ふれあい農園・ハーブ倶楽部は、そんな発想を年月をかけて具体化させた。
亀岡市南部の田園地帯に5カ所の畑を持ち、レモンバームやハイビスカスなど15種類のハーブを栽培。ハーブティーやドロップスに加工、販売している。
活動に参加しているメンバーは、60〜80代の非農家の人たち7人。定例作業は週1回、5時間ほどだが、団体客のハーブ摘み取り体験や大学生のインターンシップなどを受け入れ、農園に人の姿が絶える日はほとんどない。
活動メンバーの一人、太田康朗さん(70)は、京都市内から6年間、農園に通っている。「定年直後に、ここのハーブティーを手にする機会があり、勉強したいと思いメンバーになりました。青空の下、栽培や刈り取りは楽しく、ずっと続けるつもりです」。
5カ所の畑のうち、倶楽部発足の元になった「重利農園」(広さ10アール)は、地元出身で理事長の久保末子さん(69)が1980年、父親から遺産として譲り受けた。「初めはイモ堀りなど若い人も来る遊びの場や、野菜作りの交流サロンにしていました。母がデイサービスに通い、好きな畑仕事を諦めた姿を見て、高齢者に元気を出してもらえる農園にしたいと考えたのです」。
視覚障害者の朗読ボランティアを長年続けた久保さんは「一方通行でない、結果の見える活動」を模索。2004年、いまの形に近い健康・生きがいづくりの「農園デイサービス」事業をスタートさせたところ、60代を中心に多数が参加。介護予防にも通じる取り組みと注目を集め、翌年には亀岡市から「高齢者生きがい活動支援通所事業」の委託を受けた。
野菜からハーブ中心の栽培に切り替えたのは20年ほど前から。スペアミントで試し事業化を決断した。栽培は無農薬を貫き、種まきから収穫、洗浄、乾燥などの加工、袋詰めまで行う一貫生産方式。07年には、盲導犬を応援するハーブ入り洋菓子「クイールサブレ」を開発、話題を呼んだ。
生産と並んで製品販売も工夫を重ねている。亀岡市内の道の駅などに専用棚を置く一方、久保さんの夫、満昭さん(73)らが東寺・弘法市など京都市内数カ所で精力的に出張販売を行う。
ハーブ生産が軌道に乗ったことでメンバーに、小遣いていどの報酬を出せるようになり、「高齢者コミュニティビジネス」への発展が期待される。作業施設が置かれた重利農園は、不定期にコンサートやバーベキュー行事が開かれ、メンバーと地元住民の交流の場として定着した。
次の課題は事業理念と経営の後継者確保。久保さんは「仕事は忙しく作業はハード。一方で爽やかな汗と収穫・製品づくりの喜びがあります。理解してもらえる人に託せたら」と話している。