ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

NPO法人「ディフェンス」

先駆的に厳しい分野挑む
24時間訪問介護や福祉運送(2017/11/27)


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スケジュール会議で話し合う福井さん(右から3人目)ら、ディフェンスのメンバー。事務所は滋賀自立生活センターと同居している

 重度の障害者にとって暮らしの本拠は、家族の介護がある自宅か、福祉施設に限定されがちだったおよそ30年前。湖国で、自分が乗る車いすから「自立生活実現」の声を上げる人たちが現れ、実践や啓発へ動き始めた。

 任意団体「滋賀自立生活センター」(草津市)で現在、代表を務める垣見節子さんと事務局長の福井勲さん(59)は、そんな動きの中心にいた。

 「自立によって、やりたいことをやれる社会を、自分たちの手で切り拓こう」。垣見さんらの訴えは周囲を動かし1993年、同センターの設立に結びつく。活動はピア・カウンセリングや交流事業が中心だったが、障害の当事者が障害者や高齢者の自立を助ける先駆的な取り組みと注目された。

 「ディフェンス」は2002年、同センターと理念を共有する自立支援の事業主体(ホームヘルパー派遣など)として誕生した。障害者福祉が措置制度から支援費制度に替わる直前、サービス需要の多様化が予測される時期だった。

 「駅に多目的トイレも無く、車いすでの外出は論外。そんな時代はもう過ぎていたけど、障害者がいざアパートに住み自立に踏み出せば、介助は必ず要る。ならば質の高い介助をどう提供するのか。実情がわかる私たち自身を含めて考え実行しようという多数の思いが形にな?たのです」。ディフェンス理事長の福井勲さんは、設立の経緯をそう説明する。

 制度や社会を変えたいという願いを込めて出発したディフェンスは、事業も先駆的な取り組みが多い。移動が困難な人たちの足となる福祉有償運送では、草津市で最初に手を挙げ、行政にも働きかけ草津市と大津市に事業登録。専用車2台で、月20〜30回の運行を可能にしている。

 活動の中心になるホームヘルプ事業は、全体の約8割が重度訪問介護。24時間、どの時間帯でもヘルパーを派遣できるシフトを組み、サービス提供時間数は1カ月(5人)で560時間に及ぶ。重度訪問介護は、労力の割に報酬単価が低く、敬遠する事業所も少なくない。

 あえて厳しい分野に挑む理由を、発足時からの理事、宮下千代美さん(61)はこう語る。「支援を必要とする人が1人でもいる限り、サービスを提供するのが私たちの理想です。重度訪問介護ヘルパー養成の研修を続けているのも同じ理由。困難な状況ですが、できるだけ体制は整えておきたいのです」

 派遣事業のほか、主な活動には「政策提言」も含まれ、宮川さんらは地域の交通政策やバリアフリー化などをめぐり、行政を含めた各種の審議会、委員会で積極的に発言してきた。

 設立から15年たち、直面する課題は人材の確保と育成。ヘルパーは志望者が少なく、近年は頼りにする学生ボランティアの熱意にやや陰りがみられる。「志ある人材をどう育てるか」。事務局メンバーたちの模索が続いている。

ディフェンス
2002年、「滋賀自立生活センター」から理念は共に、活動はすみ分ける形で設立。ホームヘルパー派遣・養成などの事業を行っている。07年、介護保険事務所指定。パートを含む職員4人と、ホームヘルパー約15人の体制。
事務所は草津市草津2丁目9番4号。