京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●広がる 地域の輪 あなたの居場所SU(ス) CASA(カサ)温かな食事と会話 心満たす
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ランチタイムは、SU CASAが最もにぎやかになる時間。テーブルを囲んで利用者の談笑が続く(立っている女性が君村代表) |
地域で配食サービスを20年続けた経験があった。近隣コミュニティーの輪からこぼれ、老齢や病気で孤立を深める人々の実情は見知っていた。それでも、弁当を届けた先で、1日に3人から同じ諦めの言葉を聞くのは初めてだった。「もう死にたい」
「ショックでした。障害のある子どもを一人で育てるなど、3人とも事情を抱えておられた。でも死にたい人を放ってはおけません。家から出て人と接し、悩みを話せる居場所を、弁当より温かい食事を作ってあげたいと…」。8年前、SU CASAを開設した動機を、君村千代子代表(77)はそう話す。
スペイン語で「あなたの家」を意味するSU CASAは、京都市伏見区の7階建てマンション1階にある。テナント用の広い部屋で、入り口には「よろず相談」の看板。医師らによる医療や薬の相談、絵手紙の教室なども開かれ、年齢や性別に関係なく、だれでも気軽に参加できる。
室内は奥に調理場、真ん中に大テーブルを置き、毎週平日の正午から、でき立ての健康ランチ(500円)を提供している。栄養バランス第一で薄味の献立が基本。調理、事務を含め運営は、すべて地元のボランティアが支える。
1月初旬の木曜日、正午になると大テーブルを6人の高齢者が囲んだ。がんの再発を克服した主婦、脳梗塞から回復途上の音楽家など親しい顔ぶればかり。「最近、また顔色がよくなったわね」「若返ったと言って」。ぽんぽんと会話が弾んだ。かつて、君村代表に「死にたい」と漏らした女性(91)は、自宅からこのマンション上階に移り住み、いまはランチタイムの常連メンバーになっている。
「ここで人と触れ合う効用は絶大です。みなさんの表情が生き生きしてくるのを実感します。話しながら一緒に食べることが、いかに大切かを知りました」。調理ボランティアで通い始め、今は音楽ボランティアも務める藤井美恵子さん(62)は、人の輪の中で自身も心の安らぎを得たという。
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隣室のデイサービス施設「晴れる屋」。講師による「歌の時間」は笑顔があふれる |