ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

NPO法人「そら」

枠にとらわれず アドバイス
困難抱える子育て家庭支援(2018/05/28)


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特別支援学校親の会に協力して行われた「そら」の週末活動。子どもたちのカレー作りを、学生メンバーらが手助けした(6日、精華町地域福祉センター「かしのき苑」)

 同志社大京田辺キャンパスの学生たちでつくるボランティアサークルにある日、特別支援学校に子どもを通わせる精華町の母親たちが訪れて訴えた。「長い夏休みの間に子どもたちが有意義に過ごせる場をつくってほしい」。今から20年ほど前のことだ。

 長い休みは、子どもたちの生活リズムを乱す。自宅に閉じこもると社会と遮断されてしまう。切実な訴えに、学生たちは立ち上がった。公共施設などを借り、毎回10〜20人が子どもたちとともに工作などをして過ごす活動を始めた。

 グループはやがて支援活動組織「そら」として自立。2003年には、継続的な活動を目ざしNPO法人に衣替えを果たした。

 学生時代から活動に加わった1人が、現在「そら」の理事長を務める地主明広さん(42)。「母親たちの訴えに応じた最初の活動は『サマースクール』の名称で、今も続けています。懸命な母親たちを見てきて気付くのは、当事者努力には限界があること。だから私たちを含め社会的支援の仕組みが欠かせない」

 地域に根ざした活動を続けていくうち、さまざまの課題と直面する親と子に出会った。そこで障害のあるなしに関係なく、困難を抱える子育て家庭の支援全般に活動を広げていった。

 現在は子どもの発達支援や障害児者の一時預かり、不登校児家庭や地域の母子会活動のサポート、乳幼児親子の交流促進など幅広く活動。障害のある人に同行する外出支援の回数も多い。

 NPO法人化からことしで15年。学生ボランティアが参加する活動スタイルは今も変わらず、正規職員のほかに50人前後の学生スタッフが常時、登録している。

 5月初旬、精華町の地域福祉センターで開かれた「週末活動」には約20人の学生が集まり、特別支援学校の子どもたちによるカレーライス作りを手伝った。

 包丁や火の使い方を教えた同志社大3年生、會田優輝さん(20)は「参加して2年、人の役に立てるのがうれしい。活動を通じ、人生に大事なものをいただいた感じがします」と話した。子どもたちも、目線が近い学生たちは親しみやすい様子で、共に調理を楽しんでいた。

 「学びの広場」などを通じ最近分かってきたのは、生きづらさや生活上の不安が集中している家庭の多さ。貧困や子どもの発達遅れだけでなく、親の心の健康など複雑な要素が絡んでいるという。支援時にすでに事態が深刻なケースが多く、「そら」では抱える問題を一つずつ解決していくアドバイス活動に力を入れている。

 これから目ざす方向について地主理事長は「福祉制度には必ず枠があり、枠の中だけで活動すると、出会える親子の数は限られてしまいます。枠を取り払い、できるだけ多くの親子に出会って、困り事が起き始める早い段階から支援に入っていきたい」と話す。

NPO法人「そら」
2001年、同志社大の学生ボランティアOBらで設立。2年後、NPO法人に。精華町内をエリアに、困難を抱える母親と子どもの支援中心に活動。発達支援ルーム「こねっく」など町内に3カ所の活動拠点がある。職員数20人。本部は精華町祝園西1の8の1。