ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

認定NPO法人「リボーン・京都」

難民救援 物より技術を送ろう
経済的自立の足掛かりに(2018/09/11)


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救援の着物は今も全国から送られて来る。作業室で、着物や帯を仕分け、洗いや裁断の準備をするリボーン・京都のメンバー(京都市中京区)

 難民救援の衣類に混じった古い着物(和服)が、途上国の貧しい若者たちに経済的自立の足場をつくり、将来への希望を与える懸け橋になるとは。「リボーン・京都」のメンバーたちも、当初は想像していなかったという。

 カンボジアで大量の難民が出た1970年代後半、京都では民間有志によるカンボジア難民救援会(現・日本国際民間協力会=NICCO)が発足。そこで慈善バザーなどを担当した「お仕事会」が、「リボーン・京都」の前身に当たる。

 「タイ国境に押し寄せた難民の困窮ぶりを聞き、薬や食料を届けました。苦しかった戦中の体験を思い出し、じっとしておれませんでした」。理事長の小玉昌代さん(80)は、NICCOの創立に加わり街頭募金にも何度か立っていた。

 衣料支援のため全国に古着の提供を呼びかけると、届いた中にいつも着物が混じっている。「利用法は?」と思案するうち、ボランティアの女性デザイナーが、ほどいた生地を洋服に仕立て直す方法を提案した。裁縫にたけたメンバーたちが腕を振るい、よみがえり着物(リボーンウェア)としてバザーなどで販売。売り上げを救援費に充てた。

 ある時、現地に国連からミシンが届いていることがわかり、「ただ衣料を送るより、着物を仕立て直す洋裁技術を教えよう」と話が進んだ。小玉さんらがタイ国境へ飛び、ブルーテントの小屋で洋裁を指導。製品の完成レベルに応じて奨励金を支払う制度をつくると、難民たちの目の色が変わった。

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現地スタッフの指導を受け、洋裁に励むルワンダの訓練生
 洋裁指導(期間3年)はその後、べトナムに移り、途上国の困窮する女性や若者を対象にイエメン、ラオス、スリランカ、ヨルダンへと拡大。訓練生にはあいさつや時間厳守も教えた。外務省のNGO無償資金協力を受けられるようになり、2013年からは7カ国目となるルワンダでスタートした。

 経験を重ね定着した洋裁指導のシステムは、まず全国から届いた着物をほどき生地に直して水洗いの後、型紙と完成見本品を付けて現地へ送付。日本人スタッフの指導で、訓練生が製品に仕上げ京都へ返送する。採点して奨励金額を決め、不合格品は京都で完成品に仕上げ百貨店のバザーや直営店「三田村」(中京区)で販売する。ブルゾンやコート、ワンピース、バッグなど製品は多種にわたる。

 これまでに巣立った訓練生は約500人。技術を磨き就職を果たした人が少なくない。大虐殺で家族を失った訓練生が多いルワンダでは修了後の収入が平均2・4倍に増加。自立して才能を開花させ自分のファッションブランドを創設した青年も現れた。

 ベトナムでの支援以来、洋裁指導の責任者を務める中島茂代さん(?)は、「教えた技術は逃げていきません。訓練生の就職は、その証しで喜ばしい」と目を細める。

 今後は洋裁指導の対象国・地域をさらに増やす一方、海外での販路拡大が目標。すでにワシントンなど全米各地でファッションショーやバザーを開いてきたが、欧州その他への進出も計画している。

リボーン・京都
1979年、京都で結成された「カンボジア難民救援会」の女性グループとして発足。92年に独立。2002年、NPO法人に。難民や途上国の若者に洋裁技術を教え、経済的自立を促す活動を続ける。活動会員27人。