ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

公益社団法人「日本オストミー協会」京都府支部

励まし合い、QOL向上目指す
行政や病院などに要望重ね(2018/10/29)


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医師や専門看護師を招いて開く初心者向け相談会の準備を進める京都府支部のメンバー(14日、京都市伏見区・増田医科器械8階相談室)=写真は同支部提供

 がんや障害が原因で腹壁に穴を開けて作る人工肛門や人工膀胱(ぼうこう)などの排せつ口は、ストーマと呼ばれる。ストーマを持つ人が「オストメイト」で、総数は国内20万人、京都府内4500人と推定される。

 日本オストミー協会京都府支部は、府内のオストメイト約200人が参加。前身組織の時代からほぼ半世紀近く、会員の社会復帰やQOL(生活の質)向上に携わってきた。

 「オストメイトになると、誰しも絶望や不安で落ち込みます。悩みを解消して希望をもって生きられるよう手助けするのが私たちの役割。定期開催している社会適応訓練講習会や初心者相談会を軸に結束を強めてきました」。京都府支部長の小田原俊夫(69)さんは、直腸がんでオストメイトになった一人。会員同士が、互いに励まし合う連帯の大切さを強調する。

 オストメイトの日常は、ストーマの保護と排せつ処理に最も神経を使う。排せつ物は樹脂製の袋(パウチ)をストーマの周りにぴったり張り付けて受ける。技術の発達で、漏れや臭いの問題は解消されているが、外出先でのパウチ交換や腹部のお湯洗浄には不安がつきまとう。

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オストメイトを表す絵文字。公共の場で普及が図られている。
 京都府支部は、以前からターミナル駅などのトイレ調査を行い、「多機能トイレを導入して、お湯を使えるように」と、JRや私鉄、行政などに要望してきた。現在、京都市内の主要駅は大半が多機能トイレに移行。京都府支部が作成したトイレマップは、専用サイト「オストメイトなび」に掲載され、スマホでも見られる。

 外出時の問題と同様に、オスメイトの要望が強いのが災害時の対応。京都府支部は1995年の阪神大震災で救援に駆けつけた経験から、必需品の補装具・パウチなどを民間倉庫や公的施設に備蓄する取り組みを始めた。京都市内に拠点5カ所を確保、さらに宇治市など府内の計12カ所に広げている。

 かつて、オストメイトの術後ケアや補装具調達は、本人任せの時代が長く続いた。2003年、永久的オストメイト全員に身体障害者手帳の交付が認められ、パウチ購入は少ない自己負担で自治体から交付券が支給されるようになった。医療体制も見直され、都市部にはストーマ外来を開く病院が増加。府内では京大医学部付属病院など?施設を数え、ストーマケアの認定資格「WOC」を持つ看護師の配置も徐々に進んでいる。

 しかし、オストメイトは外見からは分かりづらく、正しい知識が普及しないまま、一般の偏見や職場の無理解にさらされやすい。今も銭湯や温泉で入浴を断られることが、少なくないという。

 発信力を高め一般の理解を促すためにも京都府支部は、会員拡大を目指してきた。副支部長の上野清さん(82)は「私自身、気兼ねなくストーマについて話せる仲間の存在に救われている。一人で悩まず、みんなで考えよう」と未加入者に呼びかける。近年、大腸がん患者の増加に見られるように、オストメイトになる可能性は誰にもあり、京都府支部では相談会の充実などに一層努めることにしている。

日本オストミー協会京都府支部
1989年、前身の「互療会京滋地区センター」から独立して発足。会員の福祉向上に取り組み、京都府からはオストメイトの「社会適応訓練講習会」事業を受託。支部内に女性会員だけの「ローズ会」もある。連絡先は075(623)7171。