ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

At-kyoto

多様な価値観認め生きやすく
障害のあるなしを超えて(2018/12/11)


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「世界ダウン症の日@京都」で行ったライブイベント(3月25日、京都市中京区)=ともにAt -kyoto提供写真

 にぎやかなブラジル音楽のリズムが平安神宮の大鳥居にまで響いた。幼児から高齢者まで年齢、服装もさまざまな人たちが打楽器を鳴らしたり旗を掲げ、陽気な足取りで岡崎公園(京都市左京区)の外周を進んでいく。ことし9月23日、ダウン症への理解を促すイベント「バディウォーク@京都」は、1000人を超す参加者でにぎわった。

 「性別や国籍、障害のあるなしを超え、多種多様な人が集まって交流することを目ざしてきました。みんなが笑っている姿が、ここにはあります」。バディウォークを主催した「At-kyoto」代表、武田みどりさん(43)は、ダウン症の8歳の次男を含め4人の子どもを育てる母親。今回5回目の開催でよい変化が起こってきたと、喜んだ。

 イベント終了後の集計では、参加者は10都府県に及び、約90%はダウン症児・者以外の人だった。世界平和を訴える外国人ランナーが加わるなど国際色も増した。岡崎公園内に設けたチャリティーマーケットの出店数は25。ボランティアによるフラダンスやライブ演奏などが会場を盛り上げた。

 バディウォークは、ダウン症理解の啓発行動として1995年、米国で生まれた。参加者が1マイルのチャリティーウォークを行うのが特徴。世界約300カ所に広がり、2014年には京都市でも始まった。下鴨神社・糺の森で開かれたその第1回目を企画したのが武田さんたちで、2回目からは岡崎公園での秋開催が定着している。

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岡崎公園の周辺をにぎやかに行進する「バディウォーク@京都」の参加者たち(9月23日、京都市左京区)
 左京区で地域交流活動に携わる傍ら、第1回のバディウォークからプロデューサーを務めるミュージシャンのスズキキヨシさん(65)は「ごちゃまぜ」の大切さを強調する。「今回のように参加者、出店者、買い物客ら、全国から集まった人がごちゃまぜになるほど多様な価値観が生まれます。これほど自由で貴重な機会はほかにない。自ら創造、発信をしたい人はこの場をどんどん利用してもらいたい」

 バディウォークと並び「At-kyoto」が年間事業の柱にしているのが、国連の定めた世界ダウン症の日(3月21日)にちなむ活動。2回目の今春は社会福祉法人・あだち福祉会が新設した「御所の杜(もり)ほいくえん」(中京区)で開かれた。熱い議論のトークライブや音楽ワークショップに約300人が集まった。

 あだち福祉会の畑山博理事長(足立病院院長)は「At-kyoto」の活動に理解が深く、来春の「世界ダウン症の日」会場も、御所の杜ほいくえんを予定しているという。

 「At-kyoto」は、これまで「ダウン症は不幸でも特別なことでもない」と訴え、交流の場づくりを重点に取り組んできた。しかし近年、出生前診断の登場などで妊娠や出産に新たな不安や悩みを抱える人は少なくない。武田さんは一人の母親として中高生や助産師などに向け機会あるごとに妊娠、出産・子育ての経験と感想を伝えてきた。今後は「At-kyoto」として、何ができるか試行錯誤を続けていきたい、としている。

At-kyoto
ダウン症の子どもを持つ保護者たちが2014年、「京都ニンジャムキッズ」として結成。2018年名称変更した。事務局090(5057)5932=武田さん。