ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

京都府網膜色素変性症協会(JRPS京都)

情報や交流の場を提供
最新医療講演会や研究助成も(2019/01/21)


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会員交流のRP洛楽サロンは、生きがいや健康づくりも目的の一つ。お腹から声を出す笑いヨガを体験する会員たち(昨年10月、城陽市・京都府視覚障害者協会南部アイセンター)=府網膜色素変性症協会提供写真

 網膜色素変性症は、網膜にある視細胞の変性、劣化によって光を感じる機能が低下する病気で、難病医療法に基づく指定難病の一つ。進行は緩やかだが、失明に近い状態まで悪化する場合もある。夜盲や視野狭窄(きょうさく)の症状で初めて気づく人が多く、国内の患者数は約3万人と推定される。

 特定の遺伝子変異が原因とされ、これまで長く有効な治療法がなかった。近年、再生医療などの研究が進み、人工網膜やiPS細胞(人工多能性幹細胞)移植による進行防止や視力回復の可能性に期待が高まっている。

 JRPS京都は、公益社団法人「日本網膜色素変性症協会(JRPS)」に所属して、治療法の確立と患者のQOL(生活の質)向上を目ざし活動してきた。

 2016年から会長を務める大菅規子さんは、23歳で病気が判明。同じ病気に悩む人たちに、有益な情報を届けるのを最優先に考えているという。「見えている人が、突然に病気と診断され、有効な治療法もないと告げられた時の衝撃は大きい。一人で悩んだり、引きこもって情報途絶に陥る人が少なくありません。治療法の研究や、この病気に適用される公的援助、障害年金の申請など重要な情報を提供してあげたいのです」

 会員同士が情報を共有して生きがいを持って暮らすため、JRPS京都は「RP洛楽サロン」と呼ぶ交流会を含めた催しを定期的に開催。楽しんで学べるようヨガや学生落語会なども取り入れた。

 16年からは、会員・患者の集い「あいあいフレンズ」を新設。京丹後市や舞鶴市など府内各地に役員を派遣して情報を届けるとともに、気楽に交流できる場になるように努めている。

 視覚障害者団体として、京都ライトハウス(京都市北区)とは緊密な関係にあり、「RP洛楽サロン」もここで行われる。副会長の寺谷強志さん(68)は「ライトハウスで音声パソコンを1年間教わり、使えるようになったおかげで世界が広がった。さらに連携を深めていきたい」と話す。

 本部組織のJRPSは、患者と視覚医療研究者、支援者の三者が会員となって一丸で病気に立ち向かう「三位一体」が設立理念。会員から集めた会費の一部は毎年、審査を経た後、創薬や原因遺伝子解析などに取り組む研究者の助成に使われている。

 JRPS京都では、最新の研究成果を会員に伝えるため、再生医療分野で最先端を担う高橋政代医師(理化学研究所網膜再生医療研究開発プロジェクトリーダー)ら、専門講師を招いての医療講演会を、定期的に開催してきた。ことしは文集読み上げや顔認識などにかかわる視覚補助器具の展示会を、福知山市で3月に開催する。

 講演会や展示会の開催は、この病気で一人悩む患者に積極的に外へ出て、同病の仲間と触れ合ってもらう狙いも込められている。開催担当の会員たちは「病気克服に役立つ新情報にふれるための良い機会になるはず。ぜひ足を運んで」と呼びかけている。

京都府網膜色素変性症協会
日本網膜色素変性症協会」(本部組織)の近畿支部として活動を始め2003年、京都支部に。16年、本部の公益社団法人化に伴い現名称に改め再スタートした。会員は20代から90代までの約90人。