ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

配食ボランティア「長岡あじわう会」

旬の献立と安心を手渡し
お互いさまの気持ちで「出陣」(2019/02/11)


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かやくご飯やイワシのかば焼きなど、約10種類の献立を手際よく調理する長岡あじわう会のメンバーたち(1月29日、長岡京市中央公民館)

 ベージュ一色、そろいのエプロンが戦支度のように頼もしい。長岡京市中央公民館の調理室に集まった女性たち約30人にとって、毎週火曜日の午後1時が「出陣」の時だ。鍋をかける、野菜を切る。誰ともなく動き始めると、慌ただしさが一気に広がった。

 調理しているのは、高齢者世帯向けの弁当90食。焼き物、揚げ物、まぜご飯と、担当ごとにばらばらに立ち働いているように見えて、全体が一定のスピードと秩序を保っている。見事なハーモニーのうちに午後3時半、ほかほかの弁当がすべて出来上がった。

 「長岡あじわう会」は、長岡京市域で福祉ボランティアの草分けだった伊藤初枝さん(故人)が、1992年に1人で始めた配食奉仕が発祥。伊藤さんの人柄を慕って手伝う人が集まり、今では調理・配達のボランティア会員(担い手会員)が43人、配食を受ける高齢者(受け手会員)は90人に増えた。

 「調理には1回30人前後は必要ですが毎回、言わなくてもそろいます。事前の催促や出欠確認はなし。みなさん、週1回の参加がもう生活のリズムに組み込まれているのです。『担い手も受け手もお互いさま』という思いで、続けてきました」。昨年から3代目の会代表を務める高原嘉子さん(78)はそう話し、会が長続きしている理由に、チームワークの堅さを上げた。

 弁当は1食500円で、調理日の毎週火曜日夕方から配る。受け手会員の安否確認を兼ねているため、手渡しが原則。男性会員4人と配達専門の女性会員に加え、調理を終えた会員らが帰り道に一人1個、2個と届けている。

 一年を通じて同じメニューは避け、旬の食材と地場野菜を必ず使ってきた。こだわりの献立は評判を呼び、90食の枠外で順番待ちが続いているという。受け手会員は70歳以上に限定しているが、家庭事情による例外も認めている。

 前代表の武藤俟子さん(80)は「担い手会員は料理上手の人ばかりで、多様なメニューをこなせます。献立を喜んでもらえると、作る私たちの元気、生きがいにもつながります」と笑う。

 食材のほか弁当に添える献立表にも工夫がある。担い手会員の遠藤裕子さんらが毎回、季節のあいさつ文を書き加える。「大寒の中、インフルエンザにお気をつけて」。節分間近の1月最終火曜日には、市内のボランティア2団体が作ったお多福と鬼の折り紙が添えられた。

 やりくりは厳しくとも安定的な活動が続いてきた会の課題は、後継者確保。担い手会員の年齢は現在39〜84歳で、平均すると72歳前後になる。最近の若い主婦は仕事を持つ人が多く、勧誘しても反応が少ないという。

 高原会長は、家庭の理解があってこそ続く奉仕だが自分のためもなる活動、と呼びかける。「年を取った時、自分が配食を受ける側になるかもしれない。助け合って生きるしかないのです。自分ができる時に、できる範囲で参加してくだされば十分です」

長岡あじわう会
1992年10月、高齢者向け配食ボランティアグループとして発足。任意団体で、活動区域は長岡京市域。調理場所は市中央公民館。問い合わせは市社会福祉協議会075(963)5508