ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

障害児者の余暇支援サークル「洛西クラブ」

信頼関係結び 育て自立心
子と学生だけで近郊各所訪問(2019/08/12)


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洛西クラブ定例の余暇支援活動で、大津市科学館を訪れ館内を見学する参加者と、同行の立命館大生たち(4日、大津市本丸町)

 電磁石や真空装置など科学遊具が並ぶ一角で、短髪の若者が3択クイズを映す画面を見つめている。出題があり回答ボタンを押した。「また正解だね」。隣に付き添う学生が肩を寄せ優しく声をかけた。

 8月初旬の日曜日、洛西クラブの定例活動は大津市科学館(同市本丸町)を目的地に選んだ。障害のある成人男女4人と、余暇支援の学生8人が電車で京都から現地へ。広い館内で4人は手厚い見守りを受けながら3択クイズやプラネタリウムなどを思い切り楽しんだ。

 障害児・者の余暇活動は、社会や自然への興味関心を広げ、個々のQOL(生活の質)向上を図るうえで必須とされる。

 洛西クラブは34年前の結成以来、障害のある子どもとその親、立命館大生の3者で活動してきた。現在、支援を受けるのは小学1年生から22歳までの12人。京都市立西総合支援学校の在校生、卒業生が中心で、知的障害から余暇活動には周りの見守りが欠かせない。

 学生たちは学友会登録のサークル「洛西クラブ」の部員。いずれも障害者福祉に関心が高く、福祉系の進路を志す人も多い。定例の活動は月2回程度行われ、グループで近郊の博物館や遊園地などへ出かける。1人に担当の学生が必ず1人付き、補助要員を加えると毎回、障害児・者数のほぼ2倍の学生が同行している。

 目的地や遠近に関係なく、参加は子どもと学生だけに限定。親が同伴しないことで自立心や社会性を育て、嫌なことも我慢できる習慣を養う狙いがある。学生は必ず目的地の下見と撮影を行い、親たちと安全確保を打ち合わせる。

 「待つことが困難だった息子はクラブの活動に参加して、友人やバスを待てるようになり、仲間意識も育ちました。学生さんは実践を重ね子どもの特性をよく知って対応してくれるので安心です。親同士で悩みを話したりOB会員から助言をもらえるのもクラブの利点です」。長男(20)が8歳のころから入会しているという一色敬子さん(49)は、そう話す。

 定例活動のほか、急用などができた個々の親からの要望に応じ、学生が近距離に同行する「個人保育」も続けている。

 余暇支援で特に重視されるのは、障害児・者それぞれに合わせた楽しみを見つけること。学生代表の産業社会学部3年、鈴木友輔さん(20)は、言葉が出ない人もあるので、まずは意思疎通と信頼関係の構築が大切と指摘する。

 「最初は、子どもたちが自由に動くのを阻止せずに観察すると動きの意図が知れ、求める楽しみが分かってくる。信頼関係が結ばれこちらの意思が通じだすと、私たちもやりがいを感じ、支援のモチベーションが上がります」

 支援の質を今後さらに高めるうえでの課題は、意思疎通のため絵と写真を多用する視覚化だという。言葉が出なくても指差し、うなずきで分かるのが利点。クラブではコミュニケーションアプリなども併用しながら、絵や写真資料の充実を進めていくことにしている。

洛西クラブ
障害児とその保護者、立命館大の学生ボランティアで1985年に結成。休日や夏休みなどに障害児・者の余暇活動を学生が支援する。現在の学生数は男女32人。運営は保護者が行い、入会は学齢期以上22歳まで。定員14人。