ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

NPO法人発達障害を考える会「ぶどうの木」

特性に応じた事業を幅広く
就労から公的支援枠外まで(2019/09/16)


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放課後等デイサービス「ぶどう畑」で宿題をしたり、ゲーム機で遊んで過ごす子どもたち(2日、南丹市園部町美園町のNTT西日本京都支店園部別館ビル3階)

 南丹市の中心部、国道9号近くにあるビル3階で「ぶどうの木」が運営する小学生の放課後等デイサービス「ぶどう畑」は、午後3時半をすぎて一気ににぎやかになった。

 「お帰りなさい」「みんな汗かいたね」。子どもたちが次々に送迎車で到着。職員や学生スタッフに迎えられ、手を洗うと全員でおやつに向かう。終わるとゲーム機を借りたり、宿題に取り組んだり。広い室内で、ルールを守れば基本的に何をしても自由とあって、子どもたちの表情は伸びやかだ。

 「ぶどうの木」は、発達障害のある人を支援する事業・活動の幅が際立って広い。放課後等デイサービスは「ぶどう畑」のほかに、中高生対象の「フレンズ」を運営。心の安らぎを与える自立支援活動にも早くから取り組み、中でも馬とふれあうホースセラピーは人気のメニューになっている。

 外出や買い物にガイドヘルパーが付き添う移動支援事業は今年で8年目。困った時の解決法を見出す相談支援事業は、行政の指定事業所になり、専門員を置く相談拠点「こねくと」を開設して出張相談にも応じる。

 豊かな田園地帯が活動エリアという特性を、利用者の就労に生かそうと4年前、南丹市内に20アールの畑地を確保。栽培した野菜やハーブの製品化に乗り出した。今年1月、採れた農産品などの加工・販売を主とする就労継続支援B型事業所「Grape garden」を開所。4月には京都府の「農福(農業と福祉)連携事業」を活用したカフェ&マルシェ「SeedS」を、事務局のあるビル1階に開いた。

 支援サービスの間口を、なぜこれほどまで広げるのか。「発達障害の障害特性は多様です。私たちを頼って来られた子どもたちや家族に『それには対応できません』とは言いたくない。特性に応じたサービスをできるだけ用意して、地域で生き生きと安心して暮らしてほしい」。理事長の西田香代子さん(48)は、そう話す。

 発達障害の長男がいる西田さんは、「ぶどうの木」創設メンバー。結婚するまで国内やオーストラリアで、ホテルコンシェルジュとして働き「お客様のどんな要望にもノーと答えない」を信条としてきた。法人を預かるいま「地域で、発達障害のコンシェルジュを目ざす」という。

 発達障害は外見で分からない体の困難を数多く伴うが、公的支援の枠から外れるものがほとんど。「ぶどうの木」は、外れる部分を埋める活動に力を入れる。「視覚『見る力』のアセスメント・相談」は、その一つ。脳の視覚情報処理に問題がある場合に起こる音読中の行の読み飛ばしや視覚認知の弱さなどを、専門講師を招き、検査や支援方法のアドバイスによって改善させてきた。学校や日常生活での困り事、体の使い方に関する作業療法士の相談・療育も同様に続け、効果を上げている。

 法人として当面の最大課題はグループホームの開設。B型事業所利用者の生活拠点や、家族が「親亡き後」を託せる場として必要度が高く、法人や会員全体で具体化の検討を急ぐことにしている。

ぶどうの木
自閉症など発達障害のある子どもの保護者が集まり2005年に発足。08年にNPO法人化した。放課後等デイサービス2カ所(定員各10人)や相談支援事業など12種の事業・活動を手がける。会員40人。職員19人。南丹市園部町美園町0771(86)8029