ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

京都ピアノとうたの音楽ひろば

大合唱…心地よい時間過ごして
伴奏者派遣や被災者習い事支援(2019/10/28)


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京都市菊浜ショートステイで開かれた「みんなで歌おう!うたごえカフェ」で、伴奏する上平代表(奥左)ら=11日、下京区西木屋町通上ノ口上ル梅湊町

 集まった約30人のお年寄りを前に、ギターと電子ピアノが軽快な前奏のリズムを響かせる。手拍子が始まり、続いて全員が声をそろえて「はーれた空」…。懐かしい歌謡曲の大合唱が広がった。

 京都市下京区の市菊浜ショートステイで毎月1回開かれる「うたごえカフェ」。「京都ピアノとうたの音楽ひろば」が、ボランティア事業として5年前から伴奏者や司会者を派遣している。好きな曲が選べるリクエスト形式で、参加者の人気が高い。

 10月例会のこの日は、代表の上平知子さん(50)が、巧みな話術と電子ピアノの伴奏で進行役を務めた。ギター担当の進藤信通さん(69)は会員歴4年。「リクエストをする人の思いを聴き、それを音に乗せるつもりで弾いています」と、笑顔を見せた。

 「音楽ひろば」の活動開始は2013年春。元京都府職員で職場や地域の合唱団などでピアノ伴奏活動の経験を長く積んだ上平さんが、生涯を通じ誰でも気軽に音楽に親しめる場を提供する活動を提案。賛同する仲間5人が集まり、まずピアノを習いたい青少年やシニアを支援しようと、京都市内の公共施設や楽器店などに協力を求めた。

 当時は東日本大震災の被災者が京都にも多数避難している時期だった。「音楽の習い事を中断している子どももいるにちがいない」。メンバーらは、広域避難者支援のNPO法人「和(なごみ)」(下京区)に協力を求め、ピアノを習う希望者を探した。

 すぐに18人の応募があり、13年秋から避難世帯の子ども・青少年対象と、一般青少年対象の「ピアノ習い事支援事業」をスタートさせた。講師は「音楽ひろば」の会員が務め、15年からはバイオリンの習い事支援も開始。避難世帯の受講者には、楽器や楽譜の無償提供・貸与を続けている。

 習い事支援と並行して、「中高年から楽しむピアノサークル」、子育て支援の「わくわく! あそびの広場」、「タブレット・スマホを楽器にした合奏指導」など5つの事業も運営。このうち、京都市内中心に17カ所で展開する「うたごえカフェ」は、主催事業、派遣事業の両方とも依頼が多く開催日数は年間約180日に達する。

 「毎日の生活に空気のように音楽があって、あらゆる年代の人が肩ひじ張らずストレスなく演奏し、歌い、聴く環境を提供したいのです」。上平さんは活動に込める思いを、そう話す。

 積極的な事業展開に伴い会員には多彩な人材が集まり、伴奏楽器も二胡(にこ)やバンジョー、三味線などバラエティー豊かになった。

 今後の課題は財政基盤の強化。事業の一部には、地域まちづくり活動と認められ行政の助成もあるが、非収益活動が基本であり余裕はない。NPO法人「和」からの支援金や、ピアノサークル(40人)の受講料の一部を、避難世帯ピアノ習い事事業に充当するなどの工夫を続けている。

京都ピアノとうたの音楽ひろば
2013年結成。会員34人。あらゆる世代に音楽の楽しみと演奏の機会を提供しようと活動。東日本大震災の避難者などを支援する「音楽の習い事活動」が認められ、京都市の18年度「京都はぐくみ憲章実践推進者表彰」大賞を受賞した。