ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

発達障害啓発キャラバン「そらまめプロジェクト京都」

孤立させぬ社会へ、理解を
当事者講演やワークショップ…(2020/02/17)


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京都市明徳児童館で開かれた発達障がいサポーター講座で議論する参加者たち(2019年11月26日、京都市左京区岩倉忠在地町)=提供写真

 自閉症やアスペルガー症候群などを含む発達障害は、社会一般の正しい理解がなかなか進まない。身近な障害でありながら外見からは分かりにくく、症状も多様なため当事者は職場や学校で「自分勝手な人」「空気が読めない」と誤解されやすい。孤立して生きづらさを感じたり、ストレスや不安が高じてうつに陥る場合もある。

 「そらまめプロジェクト京都」は、啓発活動を中心に発達障害に対する一般の理解を促し、生きづらさを感じる当事者や家族を、市民の立場から応援している。2014年、京都市の市未来まちづくり100人委員会(第4期)の参加者の中で「いま放っとけない課題」として、発達障害に関心を寄せた10人が集まり結成された。

 「発達障害の人は総じてコミュニケーションが苦手です。接する時は、すぐに変な人と決めつけず、ひと呼吸置く心の余裕が大?切。言動の特性を受け入れてあげると、お互い楽になり障害という垣根は消えていきます」。結成時メンバーの伊藤省二さん(74)は、活動を通じて学んだ経験からそう話す。

 現在の会員は、障害者の就労支援事業所代表や、看護師、大学教員、公務員、主婦など多彩。各自の専門性と経験を生かし、研修会や講座では外部講師を呼ぶ場合以外は、会員が講師を務める。

 啓発活動には、多数を集める講演会のほかに、参加者20人程度のワークショップ、5?6人規模の「プチサロン」などがある。シニア大学のような高齢者・一般対象の学習講座から依頼を受け、滋賀県や大阪府に出張することも。京都市明徳児童館(左京区)を会場に同館と共催する「発達障がいサポーター講座」は、すでに11回を数え地域に定着している。

 研修や講座の修了者には、サポーターになってもらうことを期待して、世界自閉症啓発デーのイメージカラーを使った腕輪「ブルースカイリング」を贈呈する。これまで千本以上を各会場で手渡した。

 グループ結成から6年たつ間に、発達障害の当事者4人が新たに会員に加わり、これが活動の幅を大きく広げている。

 4人のうち、大学職員の吉岡歩さんは30代女性で2年前に入会。以来、多数を前に発表する機会が増え、一昨年は女子大の授業に招かれ、学生たちに当事者の思いを語る経験も積んだ。「発達障害で困っている人たちに、私の経験談が少しでも役立ち心が楽になってもらえれば、うれしく思います」

 会員の一人で、公務員の本田耕志さんは、吉岡さんら4人と話すと、障害とは何かをあらためて考えさせられるという。「社会の無関心が障害を作り出している面もある。型にはまらない活動で、仲間と理解ある市民を増やしたい。障害の解消には社会の意識や環境を変えていくことが大事です」

 意欲的な啓発活動の一方で、グループには「いつ来ても居心地のよい場所」という役割がある。会員だけでなく、障害当事者や市民が気兼ねなく顔を出せる場づくりに今後とも努めていくという。

そらまめプロジェクト京都
2014年結成の任意団体。会員14人。京都市内を中心に発達障害への正しい理解を広めるため、講演会やワークショップ、サポーター講座などを開催している。14年度、京都市の「みやこユニバーサルデザイン奨励賞」を受賞