京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●広がる 地域の輪 学生団体「SMILE」無条件で受け入れ、悩み相談も
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町家の2階を会場に開く居場所事業「Miles」でカードゲームや会話を楽しむ学生たち(1月22日、京都市中京区六角油小路町)=提供写真 |
こたつを囲んだ学生たちがカードゲームの手を休め、互いの近況を語り始めた。「何か本は読んでいる?」「不登校体験集を少し」
SMILE(スマイル)が当日だけ借りる京都市中京区の町家。2月初旬の夜に開いた学生コミュニティー事業「Miles(マイルズ)」には、10人ほどが集まった。心休まる居場所がほしい学生(参加者) と、それを提供したい学生(メンバー)たち。両者に仕切りはなく、旧友のように接し合う。「否定しない。ありのままで。ペースを尊重する」の約束事が守られ、会場では机に向かい課題学習に集中する女子学生の姿もあった。
SMILEが目ざすのは「すべての若者が安心して輝ける居場所のある社会」。大学入学後、自分の目標が見つからず、親しい友人もできないまま不安や生きづらさを感じている学生は少なくない。
Miles事業は、信頼できる仲間と不安なく自分らしく過ごせる場を提供する目的で、毎水曜日に開く。誰でも参加でき、悩みの相談にも応じる。遊びのように見えるカードゲームも、実はコミュニケーションを増やすためだ。
「目標が見えやすかった昔と違い、今の学生は進路選択が難しいのです。自由に選べる分、それが負担になり、選んでも自信が持てないことがある。Milesは、迷い悩む人を無条件で迎え入れる事業です」。メンバーの京都大3回生、細川千夏さん(22)はそう話す。
6年前の発足以来、SMILEは性犯罪被害や不登校、引きこもりなどにも目を向け勉強会を重ねてきた。2017年からは、通信制の高校生たちと毎月、高齢者施設を訪ね、女性には爪に色を塗るネイル、男性にはハンドマッサージを施す活動を始めた。
ネイルを受けたおばあさんたちは、女子高生が「きれいに塗れたね」と声をかけると、一様に爪をかざして笑顔を見せるという。
SMILE代表で佛教大2回生、清崎鈴乃さん(20)は「ネイルは異世代交流そのもの。高校生には『喜ばせてあげられた』という自己肯定感が生まれ、高齢者には若者と接することで心身のリフレッシュが期待できます」と効果を指摘する。ユニークな手法が注目を集め、活動は京都府も参画する「京の公共人材大賞」で、18年度最優秀学生プロジェクト賞に輝いた。
地域社会とかかわるSMILEの活動はほかに、毎秋の自死遺族支援・自殺予防啓発行事「ライフin灯きょうと」がある。京都府、京都市など主催5者に、唯一の学生団体として加わり、昨年は会場のブースにPRボードを掲げ若者の自殺防止を呼びかけた。
居場所づくりで協力関係にある学習支援団体「エイドネットcafe」(中京区)とは過去4年間、コラボ事業を展開。ボードゲームなどを通じ、不安を抱える若者たちを励まし、これまでとは違う自分を見い出すように促してきた。
大学生対象の居場所事業がほぼ定着して、参加者からの評価も高いことからSMILEでは、次は高校生対象の同種事業にも乗り出す方向で準備を進めている。