ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

れもんカフェ

オンラインでも積極的に交流
認知症の人 安心して参加(2021/03/16)


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初めてオンライン方式で開かれた「カフェ」で投影された大型画面に見入る関係者(2月13日、宇治市宇治琵琶・中宇治地域包括支援センター)=提供写真

 2月の土曜日、宇治市役所そばの中宇治地域包括支援センター(宇治市宇治琵琶)の一室で、パソコン画面に認知症の人や家族、関係者の笑顔が広がった。認知症について知り、安心してふれあえる場「れもんカフェ」をオンライン方式で初めて開催、10組の当事者やボランティアらがデジタル・ネットワークを通じ、気持ちを重ね合わせた。

 この日は、同市にある京都府立洛南病院副院長当時からなじみの深い森俊夫医師がミニ講演。交流タイムで参加者一人一人が呼びかけに応じて画面に登場した。同センターでは投影した大型画面に関係者らが見入り、「通常のカフェよりも一人一人の声がじっくり聞けてよかった」などの反応もあった。

 運営を受託する同市福祉サービス公社の川北雄一郎事務局次長(53)は「本人や家族らもどうしても出かけにくくなる。カフェは出かける、出会える機会であり、介護や医療の専門職もいるので認知症に関する知識を広げ、相談もできる」と話す。「認知症が進むと、身体の動きもにぶり、通常のカフェでは参加しにくくなるケースもあるが、オンラインなら自宅から参加できる。よりリラックスできるという人もいるでしょう。新しい可能性を一つ見つけた気がする。タブレットを使うこと自体も一つの活動ですから」とも。

 同カフェは2013年にスタート。ミニコンサートの部では、市内で音楽活動する個人やグループのギターやピアノ演奏を聞いたり、いっしょに歌ったり。交流タイムは、おやつや飲み物を味わいながら楽しいひと時を過ごす場として定着してきた。15年に「認知症の人にやさしいまち・うじ」を全国で初めて宣言し、早い段階から総合的に支援する各種取り組みを続ける同市の姿勢も背景にある。

 昨年は、新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言などがあり、年度当初は開けなかった。川北さんは「認知症の場合、顔を見て活動することも大切。進行する病なので、生活が不活発になれば悪影響が出ることもある」と心配する。そこで安否確認を兼ね、これまでの利用者らに聞き取りも行い、参加人数を減らし、申し込み制にするなど対応もして6月ごろから再開。ミニコンサートはやめ、飲食も中止やセルフサービスにし、時間も1時間に短縮した。

 ここ数年で各地に広がった認知症カフェ。しかし、親密な交流と感染リスクの矛盾を懸念して、コロナ禍以降は、全国的にも3割ほどしか再開できていないという。

 宇治市では、さらなる対応に「オンラインカフェ」を発想した。オンラインでは、パソコンやスマホなどの機器を用意するのがネックになるが、宇治市がタブレット端末を10台貸し出すことになり、昨年7月から通常の「カフェ」の機会などに、参加者に扱いを練習してもらうなど準備を進めた。

 今回の試みをもとに川北さんは「カフェばかりでなく、日常的にオンラインが使えるようになれば、遠方にいても情報交換ができる。顔が見える安心感も得られる」とし、「本人が活用する気持ち、新たなことにチャレンジする意欲も大切ですから」とも話している。

れもんカフェ
宇治市の初期認知症総合相談支援事業の一つ。市内全域を対象にした月1回と、市内の8地域包括支援センター圏域ごとに年3回、合計36回開催。会場は福祉関係施設はじめ、圏域内の喫茶店や教会、お寺など気軽に参加できる場所も。府内約40団体でつくる認知症カフェ連絡会にも参加。