ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

京都ファミリーハウス

心身と経済的不安を解消
患者家族のための滞在施設(2022/01/31)


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部屋の備品準備などもスタッフが担う(19日、京都市左京区)

難病で長期間の入院治療が必要な患者に付き添う家族の心身と経済的、時間的負担は相当に重い。病院近くに一息つける滞在施設が安価に確保できれば、どんなに助かるだろう。そんな思いを形にして支援活動を続けるボランティア団体が「京都ファミリーハウス」。

自身の子どもが京都府立医科大付属病院(京都市上京区)に入院した経験のある現在の代表の古賀會委子さん(65)らが約2年の準備期間を経て2005年にマンション2部屋で始めた。順次増やし現在は、同病院と京都大医学部付属病院の近くに12部屋を確保。ベッドや寝具、洗濯機、冷蔵庫など生活できる家具類も置き、自炊もできる。

遠方からの入院で付き添いする人が病院に置いたチラシやホームページなどで知り、連絡があればスタッフは、部屋利用の申請手続きや現地での立ち合いなど、受け入れ対応も含め分担している。

夜間の急な呼び出しに対処でき、利用者のプライバシーにも配慮して、一戸建てでなく病院に近いマンションの部屋を確保する。不特定の人が入れ替わり利用するので、管理面でもマンションオーナーの目が行き届き、理解が得られるところが大切という。

「ファミリーハウス」は全国にあるが、入院患者が18歳以下の子どもだけでなく大人の家族も対なのは同団体だけ。一般に病院では幼い子には付き添いできるが、年齢が上がれば付き添いできない。同団体は赤ちゃんから高齢者まで幅広い患者家族を受け入れているので複数のキャンセル待ちが出るほど希望者は多く、通常は年間延べ約5千人の宿泊利用があった。

両病院は、臓器移植手術も行っているので、患者は全国から訪れる。時には中国やインド、東南アジアなど海外の人、旅行中の急病のケースもあったという。スタッフらは自身の家族の入院を体験している人も多く、慣れない土地での二重生活の大変さや家族の気持ちが分かるので、利用者のプライバシーには踏み込まないようにしている。「病気に関することは聞かない。患者さんとの関係ではなく、そのご家族との付き合いだと常に心している」と古賀さん。しかし、各部屋にノートを置いて利用者の思いなどをつづってもらう配慮も。こうした意思疎通も図る中で気持ちが通じるのか、利用した人と、その後も友人づきあいが続くケースもあるという。

ここ2年間はコロナ禍で、患者家族の面会が難しくなり、付き添い者の宿泊も少なく、利用が半減。運営は主に安い施設利用料と寄付で賄っており、空き室を確保し続けると経費面での負担が大きく、部屋数を当面減らすことも考えている。また、年2回各部屋の一斉清掃やカーテンの交換をボランティアを募って50人ほどで行ってきたが、密を避ける感染予防のため、現在はスタッフが交代で回数を増やしてするなどの影響も出ている。

十数年の活動中には、その他にもさまざまな課題が出てきた。「そのつど話し合い、皆で納得して運営してきました。途中でやめていく人がない。それが活動が続いている理由でしょうか」。古賀さんの穏やかな口調に地道な支援を長く続けてきた説得力があった。


京都ファミリーハウス 
スタッフもボランティアで、現在女性12人。利用は1泊1人1500円、2人目まではプラス1000円で宿泊できる。2020年度末までに延べ約6万3900人が利用した。
事務局は京都市伏見区。090(5309)4351