京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●広がる 地域の輪 上京ワークハウスカフェ接客も「やりがい」
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ランチ時間でにぎわう「まんまん堂」で働く利用者や職員ら(12日、京都市上京区) |
京都府庁の西、京都市上京区の堀川通に面した堀川商店街の一角で手作り蒸しまんを「売り」に日替わりランチやトーストなど軽食、喫茶類も提供する店「まんまん堂」がにぎわっている。同店は、就労継続支援B型事業所「上京ワークハウス」の一部門として障害者の働く場でもある。ギャラリーやカフェとしても運営されている。
同ハウスは、共同作業所として約40年前にスタート。現在41人の利用者が、40人ほどの職員といっしょに箱折りや手芸用品などの袋詰め、コインパーキングの清掃など各種の仕事を請け負っている。8人から始まった利用者の増加とともに、「何か自主製品を開発して、売り上げもやりがいも高めよう」と模索。中国残留孤児の知人がいた人から「中国の家庭料理の蒸しまんを作っては」という話が出て、18年前に民家を借りてテークアウトの店「まんまん堂」を始めた。
素人ばかりの手作りで、生地の発酵や蒸し時間の習得から試行錯誤を繰り返し、一定の水準の商品化できるまで数カ月。「当時は朝5時から作業を始めて、作った分は、その日に売り切るよう必死でした」。20年前から同ハウスで働く施設長代理の岸本佐知さん(60)は苦笑まじりに振り返る。
現在では、白菜やダイコンなど野菜たっぷりの具をもちもちした皮で包み、「あっさりしてヘルシー」と人気の本場家庭風「菜(さい)まん」のほか、小豆をコーン油で炊き上げた香ばしいつぶあん入りの中華風あんまんや季節限定のチョコまん、酒かすを加えた京風蒸しまんなど変わり種の商品も開発している。
商品として定着するとともに、大型のかくはん器や急速冷却機など調理機器もそろえてきたが、今も具を包むのは手作業。プロ職人顔負けの腕前の利用者もいるという。週末などの地域イベントで出店販売もおこなってきた。
2008年に店を現在地に移転してから、「障害のある人がいろんな人と出会ったり経験したり、社会人として自立して働けるような場に」という趣旨でカフェやギャラリーも始め、ランチ・喫茶のほか、店の壁面や棚を使いプロや美術愛好家、障害のある人の写真や芸術作品の展示、イベントも行ってきた。
ある日の昼時、2人連れでランチを食べていた近所で働く女性は「このお店は味もいいし応対も丁寧」と好印象を話した。店で接客に当たる女性利用者(30 )は「ランチタイムは忙しくなるけれど、かえってやりがいが出てここで働くのは面白い」と笑顔。
ここ2年は、コロナ禍で、やむなく休業することも何度かあり、直近では3月末から営業時間を短縮して再開したばかり。店ができない間は、テークアウトで補ったりしたが、再開しても客足がもどるには時間がかかるなど不都合な影響は大きかった。
岸本さんは「コロナ禍で、売り上げなども減り、影響はあった。最近では職員や利用者の感染の有無を確認する検査キットを購入するのに、募金を募ったことも。でも、一方でこんな困った時だからこそ協力しよう、サポートしてあげようという人や関係団体もあって、地域の中で働いていれば、地域に定着していけるということを感じています」と話している。