ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

認定NPO法人フォーラムひこばえ

誰もが心安らぐ居場所に
地域食堂や無料の学習支援(2022/12/13)


少子高齢化がすすみ、地域の人と人とのつながりが薄れるなか、高齢者を孤立させず、子どもたちが安心して遊べる場をどう確保するのか―。そんな問題意識を共有する住民有志が「宇多野に豊かな福祉を築く懇話会」をつくり、自分たちの力で何とかしようと活動をはじめたのが「フォーラムひこばえ」の始まりだった。

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真新しい建物での学習支援活動で、大学生ボランティアと宿題に取り組む小学生(京都市右京区宇多野・認定NPO法人フォーラムひこばえ)

それから約20年。現在は、児童館事業、障害児を預かる放課後等デイサービス事業(放課後くらぶ)、就労継続支援B型・生活介護事業、コミュニティーセンター事業の4本柱で活動している。正職員約20人を擁し、地域福祉に欠かせないNPO法人として確かな存在感を示している。

発足当初、まずは民家を借り、子どもたちの居場所をつくった。当時の学童保育は小学3年生までだったが、独自に6年生まで受け入れた。独自にヘルパーを雇い、障害のある子どもは制度外となる高校3年生まで受け入れた。「親が共働きかどうかや、年齢、障害の有無に関係なく、誰もが集まれる場を目指しました」と職員の正垣彩子さんは語る。

障害のある子の卒業後の働く場が必要になった。高校を卒業するタイミングで敷地内にB型事業所を立ち上げた。「やりたいこと、支えたいことが先にあって」工夫しながら取り組んでいると、後から制度が追いついてくるのが「フォーラムひこばえ」の歩みの特徴だ。

大事にしているのは、地域とのつながり。英語、ピアノ、リコーダー、お菓子づくり、手話、卓球、編物・手芸…。施設を開放し、さまざまなサークルが活動している。「ここでできた仲間の関係を地域にも広げていければ」。サークルをきっかけに、ボランティアとして福祉活動に参加してくれる人も現れている。

今年11月、念願の新たな建物がオープンした。木の香りが漂う真新しい建物はキッチンや図書スペース、工作コーナー、多目的スペースなどを備える。ここを拠点に「ひこばえYOU(よう)」と名付けた三つの新事業に乗り出す。

ひとつは地域食堂。月1回、格安でランチを提供する。「子どもだけでなく、ふだん忙しい保護者や、1人暮らしの高齢者、介護で疲れている人など誰でも来てもらえたら」と職員の江川恵さん。

もうひとつは無料の学習支援だ。大学生や元教員の地域住民が、小学4年生以上の子どもの勉強をみる。毎週火・木曜の午後4時〜6時30分と第1、第3土曜の午前10時〜正午に開く。

さらに、コミュニティースペースとして、月〜土曜の午前10時〜午後5時の間、地域の誰もが自由に使ってもらえる場を開放する。

正垣さんは「居心地のよい場にいるだけで人は落ち着き、心が整っていく。地域の人にとって、そんな心安らぐ居場所になっていければ」と願っている。


認定NPO法人フォーラムひこばえ
2005年に法人認可。児童館、放課後等デイサービス、就労継続支援B型、コミュニティーセンターの4事業を手掛ける。ボランティア募集、地域食堂の申し込み、イベントやサークル情報、寄付などはホームページで。