京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●広がる 地域の輪 劇団「まちプロ一座」経験基に心理描写も交え
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稽古場で輪になって脚本の読み合わせをするメンバーら(5日、大津市) |
創設時から参加する座長の小石哲也さん(40)は「障害のある自分たちの思いを伝える方法の一つが演劇」と話す。現在は同事業所の30代から50代の男女利用者10人と職員スタッフ6人の計16人で活動。車いす利用者も多いが、毎週一回、事業所の稽古場で脚本の読み合わせなどで演技力を磨き、照明など舞台装置の機器操作もスタッフらが手分けして担当する。
市内を中心に学校や公共団体の依頼を受けて出張上演し、市民劇団グループとの共同公演なども行ってきたが、新型コロナウイルスの感染拡大以降は影響が大きく、月1度ぐらいあった上演機会は激減している。
ここ数年は、何げない日常生活の中で、障害者だからこその個性を生かして積極的に生きていこうという物語を、心理描写も交えて展開する本格的な演劇に重点を移してきた。昨年秋には、脳性まひで車いす生活だが県営住宅で1人暮らしする福坂厚子さん(54)が、普段の暮らしで直面する出来事に対応していく様子を、心の内も重ねて脚色した新作劇「この雲の行方にありがとうの言葉をそえて」を、スカイプラザ浜大津(大津市)での定期公演で披露した。
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昨秋、公演した「この雲の行方にありがとうの言葉をそえて」の一場面 |
福坂さんは「セリフを覚えたり表現方法を考えるのは大変やったけど、楽しく演じられてよかった」と笑顔で振り返る。客席に備えたアンケートで「ユーモアも交えて明るく楽しい芝居に感激」「出演者同士がフォローしあっているのもすばらしい」などと感想が寄せられた。
一昨年の公演では、約10年前に脳梗塞で左半身まひになった井上みどりさん(58)が、障害を受け入れ、健常者と再婚した歩みを「介護する方も、される方もしんどいけれど一緒にやっていく」(井上さん心境になる様子を舞台化した「紫の夜が明けるとき」を上演した。2020年には同じく脳梗塞で車いす生活となった俥(くるま)好雄(すきお)さん(48)が、障害を受け入れるまでの心模様を描いた「秋の風は二度吹く」を制作・上演。俥さんは「自分の人生や内面をたくさんの観客に見てもらい、伝えられてよかった」と話している。
同劇団の芝居を毎年見ている観客からは「演劇としての完成度が上がっている」「セリフが聞き取りやすくなっている」など舞台レベルの評価も高まってきた。同事業所で劇団を担当する種田洋平課長(44)は「劇団員それぞれの個性を生かしたキャラクター作りが評価されている面もあり、これからもみんなで協力して作品をつくっていきたい」と力を込めた。