ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

夢花咲塾あけぼの

仕事や居場所 生活を支える
精神障害者に寄り添い半世紀(2023/03/27)


京都市中京区西ノ京円町の交差点そばにある障害者就労継続支援B型事業所「夢花咲塾あけぼの」は1970年に設立された、全国で初めて精神障害者たちの共同作業所として長い歴史を持つ。

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ビン詰めした「手作りゆずポン酢」は、自分たちで箱に詰めている(京都市中京区)

現在の施設長古賀直充さん(48)によれば、設立した故榎本貴志雄医師(89年死去)は、社会的・経済的にも困っている人を診る「赤ひげ」的な開業医だった。患者の中で精神障害者へのケアの必要性を感じていた。医院の二階を患者の居場所として提供し、「集いの会」を開いたのがスタート。その後、軽作業も始めて、「仕事といこいの集い」へと発展し、共同作業所につながったという。

その経緯から、運営するNPO法人ハートブライト(2005年に法人化)は「共生」や「協働」を今も基本理念に掲げている。名称などは変遷を経て、09年にB型事業所移行時に「夢も花も咲かせよう」との思いで現在の名称とした。

約20人の利用者が、チラシやダイレクトメールなどの印刷、下請け作業(封入、発送、箱折り)などを含め、円町交差点そばで京野菜、漬物などを販売する店舗「京の旬彩」を長く開いてきたことで知られている。

同店は3年余り前、新型コロナウイルスの感染拡大などが始まったころに閉店したが、それまで各種の果物ジャムを製造・販売していた経験から、現在は「京都らしさが売り」のポン酢商品を製造、ビン詰めして依頼店への卸などを始めている。

ポン酢は、醸造しょうゆに昆布やかつお節、酒、みりん、ゆず果汁などを独自の味にブレンドした「手作りゆずポン酢」として200_gビンに詰めネットでも販売。一部は海外にも売り込んでいる。

作業は利用者6人、職員2人が担い、製造からパッケージングまですべて自分たちの手で行っている。職員の羽室京子さん(45)と原瞳さん(27)らは「販路を広げて、たくさんの人に味わってほしい」、「ほかにも、ポン酢を使った料理レシピを考えたり、ドレッシングのように使える万能酢を工夫していけたら」と希望を持つ。

きっかけは「京の旬彩」を閉めて、独自商品の開発を模索していたころ、企業診断士にアドバイスを受け、「少量でも希望通りの製造を担える事業所」を探していた京都市内の和食業者とマッチングでき、商品化にこぎつけた。「京の旬彩」でかんきつ類やイチジク、イチゴなど季節のフルーツをジャムにしてビン詰め販売していたことで「ビン詰めの際の脱気処理や消毒、食器乾燥機などノウハウや道具を生かせている」と話す。

同作業所の特色は利用者の自治組織を持ち、利用者同士で親睦を深め、季節の行事や所外への行楽、見学活動なども活発に行っている点にもある。古賀さんは「B型事業所なので、仕事だけでなく、相談ごとや家庭訪問も含めなんでもありというつもりで運営している。利用者の生活に寄り添って、生活を支えるというつもりですね」と言い「利用者が困った時に手を差し伸べられるのがB型のいいところ」と思っている。


夢花咲塾あけぼの
 職員7人。定員は20人。月曜から土曜(水、土曜は隔週)まで開所。「コロナ禍」以降、作業時間を分割するシフト制を導入している。問い合わせは075(463)5280。