ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

チェリッシュクラブ

障害者自立へ「社会の一員」意識
調理教室や防災講座も開催(2023/04/25)


今月1日の土曜日、長岡京市のJR長岡京駅前の広場で、同市社会福祉協議会主催の「福祉まつり」に初めて参加し、自前のテントで、スタッフらが協力して作った小物入れやトートバッグなど布製品を販売したのが「チェリッシュクラブ」。同市を拠点に、20代半ばから40代半ばの障害のある男女当事者5人と、それを支える地域の支援者ら10人余りが、乙訓地域で活動する小規模なボランティアサークルだ。

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「チェリッシュクラブ」の名を掲げた自前のテントを張り、メンバーらが布製品を販売した(1日、長岡京市)

2013年に向日が丘支援学校に通う子どもらの卒業後の進路について考える保護者有志の会として結成され、福祉施設や事業所、企業の見学会などから始めた。代表の大川征子さん(54)は「最初は親の会のようなものだったんですが、徐々に当事者中心の活動になってきました。周囲の人の協力で10年間やってこられたというのが実感」と感謝する。

現在は、障害者の自立と学習への支援、居場所づくり・仲間づくり、地域と関わりボランティアもする、を3本柱に活動している。具体的には調理教室や算数・国語・英会話などの学習会をはじめ、専門家の講師を招いて2カ月に1回は性教育講座、3カ月に1度は防災への理解を深める講座も開いている。

山登り、海釣り、ハイキングなどの野外活動やレクリエーションも開催。さまざまな事情で困っている人たちに食糧支援する福祉活動「フードバンク」に関係する搬入搬出の手伝いなど、他の人の手助けになる活動も、社会の一員としての意識につながるとして取り組んでいる。

昨年2月には地域との交流場所としても活用できる待望の活動拠点をマンションの一室に開設した。当事者や関わる人誰もが大事にされる居場所を作りたいと、英語で「いつくしむ、大事にする」という意味の団体名を付けた。

「活動は公民館など公共施設を借りてボランティアの協力のおかげで続いてきました」「ようやく拠点も出来て、活動内容も徐々に広がり、新たなメンバーも募集しています。登録制で運営し、最低限必要な経費で賄っていますが、運営資金のやりくりは苦労しています」と大川さんは笑う。4年ほどサポーターをしている向日市在住の吉岡知美さん(54)は「メンバーらが活動を通していきいきしている様子を見るとこちらもうれしいし励みにもなる」と話す。

10年間には、お寺の境内の一部を借りて音楽祭を開き、出演してくれたアマチュア団体との交流関係で、大川さん親子がしばらく沖縄の楽器三線を習っていたこともあった。同市社協から賞を受け、同様に受賞した団体と知り合い、協力して活動するなど交流も広がる。

「当事者も周囲の人も、いろんな体験や人との出会いが出来、得るものがあった」と意義を感じている大川さん。「親亡き後の子どもたちが心配、というのが開始時からの動機のひとつなので、今後も当事者の自立と地域との関係を広げていくのを目標にやっていきたい」と強調した。


「チェリッシュクラブ」
拠点は長岡京市久貝、090(3862)0374。登録制で運営し、教室や講座参加には500円程度の協力金が必要。