ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

happiness

ダンスで対話、自主性養う
ダウン症理解、親子で交流(2023/05/22)


テンポのよい音楽に乗せ、子どもたちの足が一斉に宙を蹴る。回転して右手を上げるポーズがぴたりと決まった。5月中旬、京都市伏見区の体育館。京都ダウン症ダンスサークル「happiness」の定例練習は、いつも通りの明るさと熱気で始まった。

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「サークル名を染め抜いたそろいのTシャツで練習に励むhappinessの子どもたち」(京都市伏見区のパセオ・ダイゴロー)

言葉が苦手なダウン症の子どもにとって、ストリートダンスなど集団による踊りは、音楽に乗って自分を表現できる喜びが大きい。成長するに従って陥りやすい運動不足から来る肥満の改善にもつながる。

伏見区のネイルアーティスト、杉山瑞美さん(49)らダウン症の子どもを持つ母親たちは、そんなダンスの効果に注目。府内で活動するダウン症児のダンスグループに加わり2013年から、醍醐地区で活動を始めた。参加者からは「地域で長く続けたい」という要望もあって、翌年には独立。サークル名の「happiness」は、親子で幸せをつかむ願いを込めた。

「ダンスを始めた子どもたちは確実にコミュニケーション力と自主性が養われます。上級生が下級生の面倒を見るなど縦のつながりも生まれる。自然に円陣を組み『頑張るぞ』と声も上げる。驚きの連続です」。サークル代表を務める杉山さんは、子どもたちの変化に目を細める。

独自の活動が口コミで広まると会員も増えた。現在のダンス参加メンバーは6歳から30歳代までの約30人。年齢や性別で3グループに分かれ、Jポップ、Kポップに乗せたストリートダンスなどをこなす。全員で少なくとも3曲は踊れるよう、市醍醐地域体育館など2カ所で月2回の定例練習を重ねている。

成果を発表する場は、毎年3月の「世界ダウン症の日」に行われるフェスティバル(左京区岡崎)や、支援学校の夏祭りなど。地域の住民行事で披露することもある。

サークルの発足以来、子どもたちを教えてきたダンス講師、MIKIE(辻美喜絵)さんは、踊りは「楽しく」が基本、と話す。「みんな振りを覚えるのが早く、他所で教えている生徒たちと全く同じ内容で進めています。本番を成功させた時のメンバーの笑顔。その素晴らしさが、私のやりがいになっています」

コロナ禍の過去3年、発表の場となるイベントはすべて中止になった。練習も1年近く休まざるを得なかったが、MIKIEさんが自分のカルチャースクールの生徒たちを集めたダンス発表会を毎春開き、これに参加できたことで親子ともモチベーションを維持できたという。

子どもたちの健やかな発達とともに、もう一つの活動の柱が、ダウン症理解に基づく会員コミュニティーの充実。親として、子どもたちの学校や働き場所、病院、問題行動など、日常の不安や悩みは尽きず、練習日に会場別室で本音をぶつけ合い、解決策を話し合っている。年長の会員が若い母親の相談に乗ることも多く、母親同士のLINEによるネットワークも誕生した。  練習や発表会場で親と子を補助してくれるボランティアの確保は大きな課題だったが、志望する大学生が見つかり、さらに募集の枠を広げることにしている。


Happiness
 2014年、伏見区周辺のダウン症の子どもとその家族で結成。子ども集団によるストリートダンスなどを得意とする。会員は約30家族。22年、区民交流事業「伏見ふれあいグランプリ」で動画最優秀賞受賞。会員は常時募集。mail:mizzzmi-happiness1@yahoo.co.jp