ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

京の地蔵盆・夏祭り請負人実行委員会

世代超えて子どもを見守る
安全・安心な地域へ 住民つなぐ(2023/06/26)


「京都をつなぐ無形文化遺産」に京都市が選定している伝統行事「地蔵盆」の開催に向けた相談会が10・11の両日、中京区のゼスト御池地下街で催された。

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地蔵盆の現状や課題を尋ねるアンケートを来場者に配った熊本盛行代表や学生など実行委メンバー(京都市中京区)

地蔵信仰の拠点・壬生寺をはじめ玩具や提灯(ちょうちん)などの事業者、学生ボランティアで構成する京の地蔵盆・夏祭り請負人実行委員会が主催した。

代表の熊本盛行さん(60)は同区で熊本玩具を営む。

新型コロナウイルスの影響で市内一円で子どもが集う縁日形式の地蔵盆行事を中止・縮小が相次いだ。「開催した町内は平年よりも3割以下だった」というのが熊本さんの実感だという。「特に去年は復活させようと準備を始めていた町内会もあったが、コロナ第7波のタイミングと重なってしまった」。

京都市は2014年に地蔵盆を無形文化遺産に選んだ際に「住民同士が顔を合わせ、子どもを見守りながら交流する機会。地域と世代をつなぐ伝統行事」と位置付けた。

「年に1度とはいえ、提灯などの準備を通じて子の名前や年齢を近所の年配者が覚え、通学の行き帰りにあいさつが生まれる。交流が希薄になる中で世代を超えて子どもを見守ることは地域福祉面で大きな役割を担っている」と、壬生地域で育った体験を熊本さんは振り返る。

壬生寺の松浦俊昭貫主の法話で始まった相談会の会場には、地蔵盆の祭壇や提灯などの現物がテントに設置された。

祭壇やお供えを撮影していた来場者は「3年のブランクで町内会の役員もがらりと変わってしまったので飾り付けがわからないので見学に来た。町内会で説明する」と話した。

地蔵盆行事がない市から下京区に移り住みマンション管理組合で行事担当をしている会社員男性(42)は、子どもに配る玩具セットの見本を下見に訪れた。マンション建設前の染め工場でどんな品を製造していたのかということや統廃合される前の旧校への愛着などを地蔵盆行事の延長で雑談しながら学んだという。「似た世代同士のマンション住民やPTAとは異なり、親にとっても年長者と買い物など世間話を交わすようになった。パソコンデータで得る知識やメールのやりとりとは異なる温かみがある。安全で安心なまちづくりという行政スローガンは、こうしたつながりの積み重ねのことではないか」と話す。

実行委は地蔵盆開催の現状や課題を尋ねるアンケートを会場で来場者に記入してもらった。用紙を配布した学生ボランティアグループ「ASUVID(アスビッド)今出川」会長の飯田明日香さん(20)=同志社大3年=は、地域活性化の活動に取り組む中で高齢化や人口減で伝統行事が存続に揺れる一端にも触れた。自分たちもコロナ禍で活動や対面の講義など学生生活が制約された。「今年こそ地蔵盆を復活する町内が増えてほしい。8月には足を運ぶつもりです」と話した。(秋元太一)


地蔵盆
江戸時代の京都では町内ごとにまつる地蔵の縁日(旧暦7月24日から新暦8月24日)にちなんで広がった。地蔵を彩色して前掛けを着せる。僧侶が読経し2〜3メートルの数珠を住民が回す。福引きやゲーム、紙芝居などが催され、子どもにとっては夏休みの思い出の行事。