ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

滋賀県立大「ボランティア部Harmony」

普通に友達と接するように
障害者の創作・体験活動支援(2023/10/16)


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気候のよい時にはテーブルや椅子、イーゼルを置いて思い思いに絵を描く(彦根市)=Harmony提供

彦根市の滋賀県立大構内で月に1度、自閉症スペクトラム障害やダウン症など比較的重度の障害のある子どもや青年を対象に油絵の創作活動や茶道体験が開かれる。

NPO法人「障害者の就労と余暇を考える会メロディー」(東近江市)と協力して支援するのが「ボランティア部Harmony」だ。20年前に発足し、現在約20人のメンバーが活動している。

定例会はまず、学生が自主的に学び身に付けた作法で、障害当事者と保護者ら参加者と一緒に抹茶をたてて楽しむ。続いて、保護者らが持参・用意した花や食べ物などを題材に油絵の具で描く。気候がよい季節には園庭にテーブルやイーゼルを置いて、思い思いに描き、時にはお好みの文字を独自に表現する子もいる。

学生らは、「無理なく楽しく」をモットーに、背後や脇に寄り添いながら何げない会話をしたり手助けをしたりする。代表で国際コミュニケーション学科3年の西村侑花(ゆうか)さん(20)は「障害のある人というふうに特別に身構えるのではなく、普通に友達と接するようにしています」と話す。

他のクラブ活動やサークルとの連携も意識して企画を実施し、吹奏楽部やダンスサークルなどにクリスマスコンサートに出演してもらったりしてきた。ギャラリー喫茶を運営するサークルの協力で、活動で描いた油絵作品を置かせてもらい展覧会的なものも開いたりしている。

メンバーは活動を通して「いろんな人と関われる。人間的な交流、出会いができる」「相手の立場で物事を考えることが身に付いた」などと感じている。西村さんも「私の参加回数が増えるに連れ、子どもたちからの反応や対応が変わってきた。変化を自分でも感じられるようになったことがうれしい」と言う。

ボランティアをきっかけに、保育士や特別支援学校の教諭、福祉関係の職業に進んだ先輩学生もおり、卒業後も支援を続けるOBもいる。活動を評価され2020年には「障害者の生涯学習支援活動」に関わる文部科学大臣表彰を受けた。

コロナ禍の最中も交流サイトSNSなどを活用して、オンラインでクリスマスコンサートを開き活動の様子を情報発信するなど工夫を重ね継続してきた。8月には久しぶりの対面での野外体験活動として近江八幡市で「水郷めぐり」を行った。

「メロディー」とは月に1度定例会を開いて、話し合うなど協力を続ける。水郷めぐりは、お盆の季節と重なり猛暑とあって当事者の参加が少なかった。参加者の都合なども考えながら計画する反省や運営の苦労もあるという。西村さんは一方で「普段接する機会の少ない障害のある人との向き合い方やコミュニケーションの難しさを感じつつも、保護者の方々の助言や自らの経験を重ねながら、うまくコミュニケーションが取れた時には喜びを感じるんです」と笑顔を見せた。


滋賀県立大「ボランティア部Harmony」
2003年結成。22年度には「若い世代の福祉への理解を深め、活動を20年間引き継いでいる」と評価され、「京都新聞福祉奨励賞」を受けた。