ともに生きる・福祉のページ
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広がる 地域の輪

ジェンダー平等推進機構

豊かな暮らしへ道筋示す
政治分野での共同参画本へ(2024/01/29)


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フォーラム「議員と語ろう 政治分野のジェンダー平等推進」報告書の一部。一般向け刊行に向けて作業が進められている

男女共同参画に取り組む研究者らによるジェンダー平等推進機構は、国際女性デーを記念して催したフォーラム「議員と語ろう 政治分野におけるジェンダー平等の推進」の内容をまとめた一般書の刊行に向けて作業を進めている。自民党派閥の政治資金パーティー券問題で政治への信頼が揺れる現在の状況に先駆けて、福祉面など幅広い分野で豊かな暮らしを実現するために目指す道筋が示されている。

京都市中京区の佛教大二条キャンパスで2022年3月に催された。同推進機構が自費出版した当日の報告書によると、国会や地方議会で活動する主要7政党の計12人(対面5人、オンライン4人、文書3人)が参加した。このうち女性は計9人だった。

ジェンダー平等推進機構の冨士谷あつ子理事長は男女共同参画に先駆的に取り組み、男女雇用均等法の審議の過程を通じて政治家と交流を深めてきた。そうした経験を踏まえてフォーラム冒頭で講演した冨士谷さんは、政治分野での男女共同参画は「まだまだ進まない」と述べた。立候補の段階から男女比率を均等にしないと罰金を課すというフランスのような法制度上の禁止規定がないことや高額の供託金が立候補への重荷になっている問題点を挙げた。

対面で参加した政治家のうち、立憲民主党参議員の福山哲郎さんは「女性候補者の人生設計では積み上げてきたキャリアを捨てなければならないことや家事と育児と介護における負担が大きすぎる」と現状を述べた。共産党市会議員の加藤あいさんは、約22%という市議会定数全体の女性議員比率や会派ごとの比率の内訳を示して「さらなるアップデイトを実現したい」と語った。公明党府会議員だった諸岡美津さんは府議会の女性比率が全体で約21%で「女性支援者との交流や意見交換を議会質問や予算要望に反映して政策実現に結び付けている」と話した。自民党府会議員だった二之湯真士さんは自民党議員の女性比率が特に地方組織で不足しており、「一定数の女性議員がいないと改善しない悪循環がある」との見解を示した。(肩書きや数字はフォーラム当時)

福祉・介護面でヤングケアラー問題に取り組んでいる研究者の立場でオンライン参加した立命館大の斎藤真緒教授は問題を政治家に投げかけた。「支援の対象を18歳未満に限定することを危惧(きぐ)する。全世代のあらゆるタイプの人たちをどう支えていくか、ジェンダー平等政策にとって大事な条件だ」と語った。

ジェンダー平等推進機構の顧問を務める新川達郎同志社大名誉教授が閉会のあいさつで、男女共同参画は福祉や教育など幅広い分野の問題を含むことに触れたうえで「女性の政治参画の増強は、政治そのもの、国民生活を豊かにしていくことにつながっていけるようにしなければ」と結んだ。


ジェンダー平等推進機構
 2019年に設立され、佛教大の大束研究室に事務局を置いている。「フランスに学ぶジェンダー平等の推進と日本のこれから」(明石書店)などの編著がある。フォーラム「議員と語ろう 政治分野におけるジェンダー平等の推進」報告書は、送料含め千円でファクス075(493)9032で受け付けている。