ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

U . I no coffee(ユウアイノコーヒー)

生き生き働く姿 見て
印刷の就労事業所がカフェ(2024/05/27)


写真
明るく開放的で気持ちが和む内装の店内
(向日市上植野町・U.I no coffee

向日市と長岡京市の境をまたぐ一文橋の東詰めで印刷事業の就労継続支援B型事業所を運営するNPO法人が、2021年にカフェを開設した。

窓から明るい日差しが注ぎ、ふんだんに木を用いた内装の店内は、落ち着いた雰囲気で気持ちが和む。近くの小畑川沿いをウオーキングした人や犬の散歩の途中にテラスのデッキでひと息つく人もいるそうだ。

店内での接客は、母体となる別のフロアで印刷業務に携わる利用者が交代で兼務している。

カフエ部門担当責任者で、NPO法人の運営に携わる清水恵梨さん(43)によると、印刷職場の場合、外部の人には作業している人たちの働く姿が見えにくいという。「カフェでは接客の様子がお客さんに見てもらえます。利用者が生き生きと働く姿を可視化できることは、なによりも利用者の親御さんにとって大きな安心につながる」

1960年代後半に肢体不自由の子らを対象にした府立で初の養護学校(当時)が開校した乙訓地域では、多くの家族が移り住んだ。卒業生の進路として、市民や福祉関係者の尽力で働く場が次々と開設されていった。事業所ごとに工夫を重ね、魅力的な自主製品を生みだしている。その半面、歳月を経た近年は利用者の高年齢化が進む。親にとっては「自分たち亡き後に息子や娘がいつまでも元気に働いてほしい」という願いは切実だ。

母体のNPOにとって、カフェ部門の開設は経営面で収益の主な柱の一つとして、利用者の人件費を維持する要因になっただけではない。若年層が希望して入所するようになり、世代循環にもつながったという。

取材記者がカフェを訪れた時、今春から働くようになった長岡京市の19歳女性が接客していた。店内には乙訓の他の事業所の自主製品も並ぶ。焼き菓子を一つ手にとって、「これは私も大好きで、おすすめです」と自然な笑顔で話す。自ら印刷製作に携わった紙製品を手にした。「色のにじみ加減がいい感じに仕上がってます」。その口ぶりと表情から、ここで働く喜びと誇りが伝わってきた。


NPO法人友愛サポート
前身の共同作業所を母体に、向日市上植野町で就労継続支援B型事業所「ワークショップ友愛印刷」を運営。衣類へのシルク印刷を主に、オリジナル品も製作・販売し、現在の利用者は21人。カフェは同じ建物の別フロアに開設した。「Enjyoi work」を理念に、利用者が楽しんで働くことを重視している。