ともに生きる・福祉のページ
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「安心」キーワードの地域社会づくり

NPO法人シーズネット代表 岩見太市さん(2006/07/04)


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 団塊の世代の人たちは、体も心もまだまだ若い。これまでのシニアは、老後は趣味などで楽しくという考えが多かったが、団塊の世代は、それだけでは満足しません。社会とつながる活動をしたいし、多少収入もほしい、と思っている。

今後の高齢社会は「安心」がキーワードになるでしょう。だれもが、健康や介護に不安なく暮らしていくにはどうすればよいのか。団塊の世代には、安心できる地域社会づくりに大きな役割を期待したいですね。

《NPO法人(特定非営利活動法人)シーズネットは現在、北海道、京都市、三重県に拠点がある。「仲間づくり」「役割づくり」を合い言葉に、シニア世代が歌や写真などの趣味や、パソコン、歴史の勉強、子育て支援のボランティアなどに励んでいる。会員は北海道は6支部・830人、京都は320人に達する。他都市にも広がる勢いだ》

 私は北海道で、病院のソーシャルワーカーとして長く各地を回りました。老人クラブや町内会で感じたのは、体は元気でも心が元気ではない人たちが多いということ。子育てや仕事人生を終えた人たちが、将来に不安や心配を抱えている。そのことがものすごく気になったのです。
 人に必要なのは、まずいい人間関係であり、次にだれかの役に立つという社会的存在感だと思うのです。そこで「仲間づくり」「役割づくり」を通して、シニア人生を豊かに過ごしたいと、2001年に組織を立ち上げたのです。趣味のグループから始まって地域交流サロン、グループネットワークに広がりました。
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《マスコミに取り上げられたこともあって、反響は大きかった。岩見さんは元々は京都市の出身。今も実家が京都にあり、翌年、知人らとシーズネット京都を設立した。京都は現在、41グループが活動している》

 予想以上の広がりです。さみしさを感じている高齢者の拠り所がないということを実感しました。昔は地域の自治会や老人会が、受け皿でした。でもこれはタテ型社会のまま。人々が本当に求めているのは、参加者が対等につながり、役割を分担して活動するヨコ型の組織なのです。  これだけ参加者が増えたのは、シニアのニーズに合っていたからだと思います。そうしたニーズを知るために、私は絶えず地域を回って生の声を聞いてきました。今、切実なのが、健康や介護の問題です。特に一人暮らしの場合、孤立した生活による健康、防災などの不安が広がっています。北海道では、1日1回、電話して高齢者の声を聞く安心ネットワーク事業と、一人でも安心して暮らせる住まいづくりを手がけようと準備しています。

《岩見さんは、シーズネットの活動を続けるうえで、来年以降、大量に定年を迎える団塊の世代に注目している。団塊の世代がこれまでの世代と大きく違うのは、社会的活動への強い意欲を持っていることだと見ている》

写真  消費マーケットとして見られている団塊の世代ですが、介護や年金ひとつとっても、なかなか満足できるサービスはないのが現状です。これからはシニアには厳しい時代になります。団塊の世代は、多分「親の介護を考える最後の世代になり、子どもに面倒をみてもらえない最初の世代」になるのではないでしょうか。そうなると、家族の結びつきだけではやっていけない。生きがいを持ち、助け合う人間関係を築き、年をとっても安心して暮らしていける地域社会を、自らのパワーで作るくらいの気持ちが必要になります。現役の時のタテ型意識は忘れて、ぜひ社会や地域とつながってください。〈写真・遠藤基成〉

シーズネット京都
京都市上京区河原町今出川下ル2丁目栄町364ハウスセゾンビル405号 TEL075(212)9631

(次回8月6日は京都少年鑑別所法務技官・精神科医、定本ゆきこさん)▲TOP