京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●やすらぎトーク
ゴスペル歌手
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サイン会では悩みをうちあけられることも少なくないという |
かつてのわたしのように、自分が本当に大切な人間であることを知らない人が多すぎます。介護や依存症などの問題を、自分だけで抱え込んでいる人も多いと思うんです。無理して続くはずのないことをしても、つぶれてしまう。「助けて」と大声で叫んでほしい。ゴスペルはその叫びなんです。
《市岡さんの父は、かつて吉本新喜劇の座長を務めた岡八朗だ。「奥目の八ちゃん」と親しまれ、「くっさー」などのギャグで一世を風靡(ふうび)した。何不自由なく育ったが、高校生のとき、無名時代から父を支えた最愛の母がうつ病で自死する。そこから家族の暗転が始まった》
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「心配せんでええで!」と大阪弁で歌うゴスペルもまじる(京都市下京区 写真・遠藤基成) |
わたしの祈りが通じたのか、父は断酒会に入り、酒をやめたんです。わたしは自立してもらうために、60歳を過ぎた父に、「ごみ捨てて来て」「洗濯機はこうして使うねん」などなど、いろいろ言いました。酒を断ち、やれることは自分でやるようになった父を素晴らしいと思いましたね。憎んだこともあった父でしたが、最期は「大好きなおとうちゃん」として見送ることができました。
《家族のことに時間をとられたことなどから、離婚という苦い経験をした市岡さんだが、昨年米国人男性と結婚、壮絶人生を経て幸せをつかんだ。現在、コンサートや講演活動は全国に及んでいる》
ゴスペルは、祈りと賛美です。祈りのなかに希望があり、賛美のなかに喜びがあります。もう父も母も弟もいませんが、歌い、語っていると、家族をすぐ身近に感じることがあるんですよ。わたしを通してみなさんに語っているような…。
わたしは、今の日本で最も必要とされているのは「励まし」だと思うんです。わたしが活動しているのは、触れ合ったみなさんに、「元気になりました」「勇気が出ました」と感じてほしいからです。それがわたしの仕事だと思っています。これからも自分の体験を生かして、前向きに生きます。
いちおか ゆうこ
1964年兵庫県生まれ。4歳からピアノ、歌を習う。カナダ領事館秘書の経験も。
著書に父娘共著の自叙伝「泣いた分だけ笑わしたる!」(マガジンハウス)。