お楽しみ情報
京滋のくつろぎスポットをご紹介します。京都滋賀にある素敵なスポットがあれば、ぜひ情報をお寄せ下さい。

手作りのぬくもりに触れたくて、
 焼きもののまち・信楽かいわいへ。(06/11/14)

文・北浦加代子

写真  京都・滋賀の山も少しずつ色づきはじめ、実り多き季節になってきました。きのこや銀杏など秋の食材がたくさんいただける温かいお料理は、身も心もホカホカにしてくれる元気の素。

 今回は、そんなお料理を、さらに美味しくしてくれる手作りのうつわと、同じ窯でも「釜」で焼く信楽のニューフェイス、天然酵母のパン屋さんを求め、信楽を訪ねました。観光マップはこちら


「窯元散策路」で窯元を尋ねて


 京都とは、また少し違った山の彩りを楽しませてくれる信楽。「紫香楽」という看板も随所に目に付くこの地は、1200年の昔、聖武天皇が紫香楽宮を造営したのに始まり、徳川時代には幕府直轄領として代官所がおかれるなど、由緒ある伝統のまちとして今日に至っています。信楽駅
 清らかな水と澄んだ空気に恵まれた標高300mほどの高原性地帯には、鎌倉時代中期から穴窯による“陶器”が作られるようになったと伝えられています。

 信楽に着いて、まず迎えてくれたのは、おどけた表情が愛らしい陶製のタヌキたち。大小さまざまな表情で楽しませてくれるこのタヌキは、「信楽狸八相縁喜」や、「他を抜く」という商売繁盛の縁起物として、京都の店頭でもよく見受けられます。

 信楽高原鐵道の終点「信楽駅」から橋を渡り信号を越えると、新宮神社の鳥居が見えてきます。神社横には「窯元散策路」と書かれた道標があり、伝統ある窯元や若手の作品が並ぶギャラリーなどが軒を連ね、登り窯や無造作に積まれた古い火鉢、とおりに書かれた「陶生町」「焼屋町」といった町名が、陶都信楽ならではの風情をかもし出しています。


まるでペンションのような陶房「小川顕三陶房」


外観

 ここは、この道50年という小川顕三さんの陶房。
 色づきはじめたもみじのトンネルをくぐると、広い敷地に建てられた1階建ての工房が佇み高台には、ペンション風の素敵な家が見えてきます。陶芸や宿泊ができるようになっており、「本格的な陶器づくりを目指す方、器の魅力にひかれる方、料理との器の関わりに興味のある方、あるいは旅行がてら訪れた方など、ぜひ気軽にどうぞ」と、小川さん。

 1Fは陶芸教室、2Fはギャラリーや調理の出来るキッチン、掘ごたつ式のサロンスペース、宿泊の出来る和室の部屋が設けられ、サロンの窓から望む足下には薪が積まれた登り窯の屋根が見え、目先には、のどかな信楽の風景が窓一面に広がっていました。

 帰り際、仕事場をのぞくと、ろくろの前に「一生勉強」「今日が一番いい日」「一歩一歩」などと書かれた名刺サイズの紙が貼られ、小川さんの作陶にかける思いを垣間見たような気がしました。
庭ろくろ前小川陶芸倶楽部サロン小川陶芸倶楽部ギャラリー
 毎年春秋になると、滋賀県はもとより、他府県から訪れるお客さんが宿泊を兼ねて陶芸体験や信楽散策を楽しまれるようです。食事は、すべて持ち込みで調理できるので、気の合う仲間同志で訪れると、楽しい思い出づくりができそうです。詳細はこちら(http://www.ogawa-kenzo.com/)をご覧ください。


手作りの石釜で焼く、まごころの味


天然酵母パン   再び散策路に戻り、今度はおいしい天然酵母パンを焼くホーリーこと、堀内悟さんの石釜パン工房「ワイルドキッチン」を訪ねました。

 堀内さんは、「菱三陶園」さんの協力を得て、パンを焼くための石釜はもちろん、小さな小屋を自力で改装したという方。「長野県でレストランを営むカナディアンファームの長谷川豊さんのもとで修業を積み、念願のお店をオープンした」と話されていました。

石釜 チーズカンパーニュやライ麦パン、自家製ドライアップルパンなどバラエティー豊かに並ぶパンの数々。いただいた地元の朝宮茶を練り込んだ干しぶどう入りのパンは、外はカリカリ、中はもちもちっとした食感。最初は味見のつもりで薄くカットしてもらったパンを、全部平らげてしまったほど、美味しかったです。

 「安心して食べていただける国産の小麦粉を使い、酵母は季節に採れる果物から2〜3種類のものを使用しています」と話されていました。売り切れ次第閉店するパン屋さんなだけに、早朝から車で買い求めに来る人たちも多いようです。


■ワイルドキッチン(菱三陶園内)
甲賀市信楽町長野768 TEL.0748-82-3642 
11:00〜17:00(金・土・日・月曜と祝日)


yasuo

素敵な奥様がおもてなし。窯元の直営ギャラリー


 散策路をしばらく行くと「器」と書かれた大きな看板。中に入るとご主人と思われる年配の男性と、若い男性2人が作陶しておられ、歩いてすぐのところにある直営店を教えていただきました。

 国道307号線の平和堂向かいに、かわいい埴輪のイラストがトレードマークになった「ギャラリーYASUO」は、先ほど訪ねた「やすお陶房」の直営店。
土鍋
 「安兵衛窯は、伝統美の中に現代感覚の釉薬を研究し、独自の色目を表現しています。常に創意と工夫をもって、料理人に喜ばれる器を目指しています」と語る五代目の奥田安正さん。

 店頭には、できたばかりの素敵な土鍋が数多く展示され、どれも手の温もりが感じられる優しい風合い。また、ユニークな名前のロゼ釉やシャム釉など、斬新な色合いの器が目立ち、「外人のお客様や買い求めに来られたお客様が名付けられたんですよ」と、笑顔で応えてくださる奥様。

 毎日カウンターで、珈琲のおもてなしをされているようで、私もご主人の作られたカップで、美味しい珈琲をいただきました。

 当日は、大阪でお店を経営する料理店オーナーも器を見に来られ、大きな器を買って行かれました。他府県から訪れる料理人御用達のお店のようです。

yasuo yasuo

■やすお陶房
甲賀市信楽町長野771 TEL.0748-82-0347

■ギャラリーYASUO
甲賀市信楽町長野620-1 TEL.0748-82-0090 
11:00〜17:00 不定休


うずくまる 陽射しの強かった日中に比べ、日が暮れると急に肌寒くなる信楽の地。
 帰りに信楽銘菓店で知られる「うずくまる」に立ち寄り、おいしい和菓子をいただいて帰りました。うずくまる、とは室町時代から信楽に伝わる小さな壷のことだそうです。

■信楽銘菓 うずくまる
甲賀市信楽町長野材木町584-2 TEL.0748-82-1413




▲TOP