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京滋のくつろぎスポットをご紹介します。京都滋賀にある素敵なスポットがあれば、ぜひ情報をお寄せ下さい。

名水・銘酒を求めて
 伏見かいわいへ(07/02/06)

文・北浦加代子

伏見江戸時代には「伏水」とも書かれたほど質の高い伏流水に恵まれた伏見かいわい。
現在でもその水質は変わることなく脈々と地下の奥深く流れています。

今回は名水が湧くところに旨いものあり!と秘かに期待しつつ、風情ある酒蔵の町並みや、かつての伏見港周辺を流れる宇治川派流域を散策しました。観光マップはこちらをご覧ください。



御香宮神社

良質の地下水が生んだ、伏見の酒。


近鉄京都線「桃山御陵前」で降り、東に向かうと、「御香宮神社」にたどり着きます。

境内には、「貞観4年、境内からたいへん香りの良い水が湧き出て、病人がこれを飲んだ所たちまち治ってしまった」と伝えられる御香水が湧き、ペットボトル片手に水をくみに訪れる地元客でにぎわいます。
また、遠州ゆかりの石庭(大人200円)や、昭和61年に京都市登録天然記念物として登録されたソテツも見応えがありました。
ちょうどこの日は初宮参りに訪れる人が多く、日本第一安産守護之大神として広く崇められているということを後で知りました。 ごこうすい


その後、社務所で伏見かいわいの地図をいただき、西にある有名な大手筋商店街に向かいました。
駅員によると、詳しい地図は、駅から5分ほど南西に歩いたところの伏見夢百衆に置いてあるそうです。

伏見夢百衆伏見夢百衆とは、十石舟や三十石船を運営されている(株)伏見夢工房さん直営のお店。
大正8年に築造された月桂冠株式会社の旧本店社屋を活用した店内には、伏見の清酒20銘柄約100種をはじめ、名物酒カステラ、酒まんじゅうなど、さまざまな伏見名物を販売しています。レトロな雰囲気の喫茶コーナーでは、伏見清酒20銘柄のきき酒やお酒の仕込み水で点てた水出しコーヒー・紅茶がいただけます。

駅

日本初の銀座が伏見に?!


京阪「伏見桃山」駅を降りてすぐのところにあるのが、かつて伏見城に出入りする一番重要な道だったと伝えられる伏見大手筋商店街。雨の日でも傘要らずのアーケード付き商店街です。

商店街に入ると、まず目に着くのが「ろうきん(労働金庫)」前に建つ石碑「此付近伏見銀座跡」。
銀座跡 そこには「これより北方の銀座町は江戸時代のはじめ、徳川家康によってはじめて銀座がおかれたところである」と書かれており、商店の人が「東京の銀座は有名ですが、ここが最初の銀座ですよ」と自慢げに話されていました。

ちなみに銀座とは鋳を加工して一定の品位をもつ丁銀、小玉銀などの銀貨をつくる独占鋳造所のこと。駅前と言うこともあってか、たくさんの自転車が停められており、見逃す観光客も多いのだそうです。


油長 商店街をさらに西に進むと中程に「吟醸酒房 油長」があり、伏見の蔵元がつくる大吟醸酒・吟醸酒・古酒・生酒が所狭しと並べられていました。中のカウンターでは、突き出しと3種類の銘酒を選んできき酒が楽しめる「きき酒セット」が人気のようです。

惹きつけられるようにカウンターに座り、店に貼られていた人気のベスト10から3種類のお酒をいただくことに…。
お酒はもちろんですが、おなかが空いていたせいもあってか、突き出しに出された冷や奴とフキノトウの佃煮がとても美味しかったです。

山形屋市兵衛山形屋市兵衛

竹田街道沿いでユニークなパン屋さんを発見!!


竹田街道沿いの油掛通りを下がった所に、のれんを掲げる「山形屋市兵衛」があります。
何のお店かと思いながら中に入ると、焼きたてパンの香ばしい匂いが充満しており、奥様は「城下町、港町、宿場町として栄えた伏見の町も鳥羽伏見の戦いで町の大半が焼かれましたが、当時は、うちも旅籠として今も残る『寺田屋』さんと軒を連ねていたそうですよ」と話してくれました。寺田屋

8代目となるご主人は屋号を継ぎ、15年前からパンを焼いているそうです。

山形屋市兵衛 落ち着いた店内には、表の看板と同じお侍さんがパンを両手に持つ粘土細工が飾られていました。パン職人さんだけあって、人形もさすがの腕前。百貨店での売り出しの時に作られた作品なのだそうです。


情緒あふれる港町で、きき酒を。


京橋 竹田街道をさらに南へ歩くと、幕末当時、喧噪を極めたといわれる伏見港にたどり着きます。
京橋という橋がかかり、橋下には三十石船のりばのある「伏見みなと公園」があります。川の流れは宇治川を経て、淀川に通じています。

橋の近くの案内板には「慶長年間、角倉了以(すみのくらりょうい)が京都市内と伏見との間に高瀬川を開削するに及んで、この付近は旅人や貨物を輸送する船着場として大いに栄えた。しかし、明治初年、京都・大阪間に鉄道が開通するにあたり、次第に寂れ今は往時の盛観は見られなくなっている」と書かれており、今では竹田街道を走る車が行き交い、往時をしのぶ面影すらなくなっていました。


伏見みなと公園 京橋の下を流れる宇治川派流に沿って東へ進むと、蓬莱橋、弁天橋と続きます。
弁天橋周辺には、往時をしのばせる十石舟のりばや、紅柄塗りの唐模様山門で知られる長建寺、 長く続く白壁土蔵の月桂冠大倉記念館など、江戸末期から明治、大正にかけてつくられた酒蔵や名所が点在しています。


月の蔵人 お昼も過ぎた2時頃。月桂冠大倉記念館近くにある「月の蔵人」で、1日限定40食というおいしい水で作られた豆冨(とうふ)付きの月替り御膳(1600円)をいただきました。デザートやコーヒーも付いており、残り1人前というのがラッキーでした。テーブル席や掘りごたつ席などが設けられたこの店も、もとは月桂冠の酒蔵だったようです。


月桂冠大倉記念館 いよいよ酒蔵の中でのきき酒を、と期待しながら「月桂冠大倉記念館」の格子戸をくぐります。

中に入ると左手には、月桂冠の前身「笠置屋」のマークが入った提灯箱、月桂冠印入りの大火鉢、大福帳、天秤、銭箱など明治時代の帳場を復元した部屋があり、当時の様子がしのばれます。

月桂冠 また、ここでは仕込み水として知られる「さかみづ」が、こんこんと湧き出ており、その味わいは柔らかくて、とてもまろやか。さかみづは、栄え水として古くは酒の異名でもあったと伝えられているようです。

館内をまわった後は、吟醸酒やワインのきき酒をさせていただき、試行錯誤をくり返してきた酒づくり人の技と智恵が、その深い味わいに息づいていることを実感しました。
さかみづ入場料は大人300円が必要ですが、きき酒とお土産がいただけます。

TOPに入れた松本酒造(写真)は、伏見大手筋商店街をまっすぐ西へ進み、濠川を経て東高瀬川のすぐそばにありました。春には土手一面に黄色い菜の花が咲き、美しい景観が楽しめるスポットになっています。

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