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さくらの隠れ名所・山科疎水へ。(08/04/15)

文と写真 北浦加代子
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日ざしも穏やかな休日の朝。
少し足をのばして山科の疎水へ。
桜が連なる疎水沿いから
樹齢100年以上という枝垂れ桜の毘沙門天までを
お弁当持参で歩いてみました。
MAPはこちらの「おだやかな時間の流れを感じる・山科疏水みち」を選ぶと、ダウンロードできます。


●我が国文明史に大きな足跡を残した
琵琶湖疎水

疎水 琵琶湖疎水は、琵琶湖の水を京都に引くために建設された全長20kmにおよぶ人工の水路です。
大津市三保ヶ崎の取水点から長等山をトンネルで抜け、山科北部の山麓をめぐり蹴上に出て、蹴上から約36メートルの落差をインクライン(傾斜鉄道)で下って鴨川に至り、鴨川合流点から下流は鴨川左岸、深草、伏見を経て濠川に流れ出ています。

京都は平安京以来、日本の首都として栄えてきましたが、明治2年に東京へ都が移り、産業も急激に衰退していきました。
そんな京都を復興させるために計画されたのが疏水事業で、その主唱者である第3代知事・北垣国道(きたがきくにみち)氏をはじめ、工事を担当した田邉朔郎(たなべさくろう)氏らは、疎水の水力で工場をおこし、舟で物資の行き来を盛んにし、明治24(1890)年、蹴上に日本初の商業用水力発電所を稼働させ、我が国文明史に大きな足跡を残しました。(琵琶湖疎水の歴史より)


●山科盆地を眺めながらの桜並木・疎水の道

そんな歴史を持つ疎水の道も、今は東山自然緑地ジョギングコースとして地元の人たちに親しまれています。

本圀寺道しるべ 地下鉄東西線の「御陵(みささぎ)」駅で下車し、道標とおり北に進むと、地域の子供たちを守るお地蔵さま「鏡山地蔵尊」があり、さらに進むと、「曹洞宗 永興寺(ようこうじ)」と矢印で記された道標とあわせて疎水が見えてきます。

疎水沿いには非公開の史跡が多く、天智天皇陵から少し西に歩けば、日蓮宗の大本山「本圀寺(ほんこくじ)」、東に進むと深い木立の中にたたずむ高野山真言宗の「安祥寺」があります。

「安祥寺」の北方向には、都七福神のひとつである毘沙門天が祀られる「毘沙門堂」と、「双林院(山科聖天)」が並び建ちます。特に毘沙門堂には、樹齢百数十年という枝垂れ桜と動く襖絵があると知り、興味津々。さらに東に進みます。
山科の街
山科駅に最も隣接する
疎水沿いから街を見下ろす
安朱橋
桜と菜の花が一面に広がる安朱橋から


疎水の道は所々で山科の街を見下ろせるスポットがあり、ベンチが設けられているので、持参のお弁当を広げる人の姿もちらほら。 おいしそうな匂いに釣られ、私も昼食をとることにしました。

安朱橋あたりまで来ると、人の数もしだいに増えてきます。
この周辺は取材当日、桜の花と黄色い菜の花が満開で、一眼レフカメラ片手に撮影をする人も大勢見受けられました。

その橋から左に折れ北に進むと、忠臣蔵で有名な「瑞光院」が見えてきます。赤穂浪士46人の遺髪搭があり、毎年12月14日(大石内蔵助が討ち入りをした日)には「山科義士まつり」が開催されるとか。討ち入り装束に身を固めた行列が47士の遺髪を納めたこの寺で法要を行い、山科区役所まで総勢300人がパレードするのだそうです。


●動く襖絵と枝垂れ桜など
見応えたっぷりの毘沙門堂

毘沙門堂 一瞬、躊躇してしまうほどの長い石段。それを登りつめたところが仁王門で、阿吽の像が迎えてくれます。
毘沙門堂に到着すると、見事な枝垂れ桜が出迎えてくれます。小坊主さんの案内によると、この桜はJRのコマーシャルでもお馴染みの「そうだ、京都、行こう」の最初のロケ地に選ばれたスポットなのだとか。その枝張りは30メートルにもおよぶと言われています。

正面には、「本尊毘沙門天」を安置する本堂があり、その左手回廊を渡ると、もともと御所にあった後西天皇の旧殿を移築した宸殿、そして阿弥陀如来が安置されている霊殿、江戸初期に造られた回遊式庭園の晩翠園へと続きます。霊殿の天井は見る角度によって顔の大きさや目の向きが変わる龍が描かれていました。

枝垂れ桜 また境内には、秀吉公の大政所高台尼が大阪城内で祀ったとされる「高台弁財天」もあります。高台弁財天は、芸能の神様でもあるとかで、松竹新喜劇で活躍した藤山寛美さんもよくこの地を訪れたそうです。

毘沙門堂は、応仁の乱によって徳川家康のブレーンの一人、天海上人が再興した寺であり、後に門跡寺院になったことから、見事な装飾や絵画が数多く見られます。
宸殿の襖絵は、全て江戸前期の狩野派の画家・狩野洞雲(かのうどうしゅん)の筆によるもので、中でも有名なのが「九老之図」。老人が書を広げている机を注視しながら移動していくと、いつの間にか机の向きが変わって見える逆遠近法を用いた不思議な絵が見られます。本堂・宸殿・唐門・仁王門等の建造物や、狩野洞雲筆の障壁画等は共に京都市指定・登録文化財となっています。

春は桜、秋は紅葉が素晴らしい穴場スポット、京都・山科。ぜひ一度訪ねてみてはいかがでしょう。 今回は足で回りましたが、疎水と毘沙門堂を訪ねる場合は、JR「山科」駅をポイントに、疎水を横切る安朱橋を渡り、毘沙門堂まで車を走らせる事も可能です。


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