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京滋のくつろぎスポットをご紹介します。京都滋賀にある素敵なスポットがあれば、ぜひ情報をお寄せ下さい。

潮風に誘われて、伊根の舟屋へ。(08/08/19)

文・写真 北浦加代子

舟屋

今回は、舟屋の町並みで知られる伊根町をご紹介します。
日本でいちばん海に近い家に住む
伊根の人たちは、とても素朴でおおらか。
猫のようになくウミネコや
風を切って清々しく飛ぶカモメたちの歓迎を受け、穏やかなひとときを過ごしました。

地図はこちらをご覧ください。
山側に位置する社寺、点在する石垣、祠、井戸などを含め集落全体が、2005年(平成17)に国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されました。

●列車で行く丹後半島への旅

伊根湾 京都駅からJR特急はしだて3号に乗ると天橋立まで2時間余り。そこから路線バスに乗り換えて約1時間、ゆったりと海を眺めながら丹後半島の「伊根」バス停に向かいます。

のどかな伊根の町並みには、リヤカーで野菜を運ぶおばあさんや、1時間に1本のバスを待つおじいさん、バス道を掃除する民宿のおばさんなど、高齢の人の姿が目につき、時がゆっくりと流れているのを感じます。

伊根といえば、浜ちゃんスーさんでおなじみの「釣りバカ日誌5」(1992年)、NHKの朝ドラ「ええにょぼ」(1993年)のロケ地で有名になりましたが、特に観光地化されることもなく、のんびりとした漁村の風景がここにはたくさん残っています。

「伊根」バス停から歩いて15分の高台に道の駅(舟屋の里公園)があることを地元の人に教えてもらい、夏休み中の静かな中学校を横目にトンネルをくぐります。あたりはミィーンミィーンと鳴くセミの大合唱。まるで故郷にもどってきたかのような気分です。

道の駅 汗だくになりながら道の駅内にある観光協会の扉を開けると、広報ルームの方が「おつかれさま」と笑顔で迎えてくれ、見所スポット日帰り温泉船のタクシーなど、とても丁寧に教えてくれました。ここからは、伊根湾が一望でき、最頂部からは越前海岸まで見通せるそうです。

また、旬の魚料理がいただけるレストラン舟屋やお食事処油屋、海の幸を加工した地元の産品が並んでいました。界隈のお食事処でも夏はブリ、冬はカニなど、水揚げされたばかりの新鮮な旬の魚がいただけます。


●人々の優しい心根を伝える青島の“鯨の墓”

青島

伊根湾は1656年(明暦2)〜1927年(昭和2)頃、約350頭の鯨を捕獲した記録があるほど、捕鯨が盛んだったそうです。

伊根湾の入り口には、防波堤の役割をする青島がぽっかり浮かんでいます。その島には、昔、鯨を捕獲した際に、母鯨の乳にしがみついていた子鯨を漁師たちは哀れに思い供養したという“鯨の墓”があり、伊根の人々の優しい心根を伝えるエピソードがあります。

近年では京都府随一のブリ漁港として知られ、1997年の12月25日には、22年ぶりに6670匹もの大漁の伊根ブリが捕れ、人々は「海からのクリスマスプレゼント」と、大いにわいたことでも有名です。当時は1匹2万円もする寒ブリで、漁師の人たちも「海に感謝したい。不漁続きでも伊根の漁師の誇りを持って、みんなでがんばってきた甲斐があった」と、コピーされた新聞紙上に大きく取り上げられていました。


●舟屋で暮らす伊根の人々

舟屋

青島を天然の防波堤にした波の静かな伊根湾は、潮の干満差が少なく、陸から急に海が深くなっていることから良港といわれています。その伊根の漁港を約230の「舟屋」が軒を連ねて取り囲みます。その景観は、まるで将棋の駒を横一列に並べたようです。

舟屋は今でこそ立派な建物になっていますが、江戸時代の頃は藁葺きで、その中に「トモブト」と呼ばれる木造の小舟を小屋の中に引き込んで、大切に保管されていたそうです。

ウミネコ 青島は伊根の人々にとっては、極めて神聖な場所で、一般の人は上陸できないエリアなのだそうです。原生林の樹木は、海の生物を育てる森の栄養分を生み出す“魚付き保安林”で、伐採禁止区域となっています。

舟屋の中を見学させてもらいましたが、1階の床は、船を海から直接引き上げられるよう海側に傾斜しており、2階は居室や民宿として利用されていました。舟屋から道を隔てた山側には母屋が建っています。舟屋から見るマリンブルーの海水は、とても透き通っていて魚の姿も見られるほどでした。

●伊根湾めぐり

伊根湾めぐり

路線バス「日出」で下車し、わくわくしながら遊覧船に乗り込みます。

湾内を約30分かけて周遊する船上からは、伊根湾と若狭湾の境に建つ真っ赤な灯台や、海の守護神を祭る蛭子神社や鯨の墓のある青島、水揚げ作業が行われる伊根漁港、山の中腹に建つ道の駅「舟屋の里公園」などが見渡せます。

デッキ側には、観光客が与える餌(えびせん)を求めてカモメたちが群がります。

灯台 この遊覧船の前身は、汽船「宏昭丸」で、宮津-江尻-日置-波見-岩ケ鼻-日出-平田-亀島などの桟橋間を1896年(明治29)から1978年(昭和53)年まで運行し、多いときには28万を超える人たちを運んでいたそうです。

1960年から機関長をつとめたという倉野義男さんは、「宏昭丸」を後世にも語り継いでいくため、在職中に40分の1に縮小した模型を再現したことを話してくれました。倉野さんは、永年伊根で漁師と組合長を務め、奥様が亡くなる10年ほど前まで舟屋の民宿「えびすや」を、ご夫婦で営んでおられたそうです。 宏昭丸


●海の祇園祭「伊根祭」

毎年7月27-28日には、恒例の伊根祭が開催されます。

海の祇園祭と伝えられるこの祭りは、300年余りの伝統を誇る丹後の夏の風物詩です。伊根湾一帯で繰り広げられる海上渡御は、海上での安全や大漁を祈り、 五穀豊穣への願いを託します。

残念ながら祭りを見ることはできませんでしたが、倉野さんの願いどおり、永年受け継がれてきた伊根の祭りは、いつまでも大切に守り続けて欲しいものです。

今回は無理をいって舟屋で1泊させていただきましたが、車いすでの乗り込みは斜面で狭く、大変危険です。
近隣に、温泉付きの宿ログバードの森などがありますので、宿泊の際はそちらを利用された方がベストです。詳しくは観光協会まで。

漁港舟屋海の幸
伊根町の漁協
舟屋の前で作業をする漁師
舟屋の軒先で干される海の幸
伊根山の中腹に立つ道の駅夕陽
伊根バス停から道の駅へ
山の中腹に立つ道の駅
舟屋から夕陽を望む
舟屋裏の細道を走るバスの停留所舟屋から見た海天橋立駅
舟屋の裏を走るバスの停留所
舟屋から見た海
天橋立駅

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