お楽しみ情報
京滋のくつろぎスポットをご紹介します。京都滋賀にある素敵なスポットがあれば、ぜひ情報をお寄せ下さい。

着物姿でのんびりと、そぞろ歩く白川沿い。(08/12/09)

文・写真 北浦加代子

白川

京都の白川は、比叡山山中の滋賀県山中町に源を発する9.3キロメートルの川。
山中の花崗岩を崩して運び出されるため、その名の通り川底が白くなっているのが特徴です。
川の流れは銀閣寺を経て岡崎から粟田口あたりに至り、知恩院の前、祇園、巽橋を経て鴨川に合流しています。

今回は、下流の鴨川から、さかのぼって歩いてみました。
地図はこちらをご覧ください。中心点「+」を川に沿ってクリックすると地図もついてきます。


喧噪から離れ、京都のパリへ

鴨川 師走に入り、南座には京の冬の風物詩「まねき」があげられ、とてもにぎやかになってきています。「まねき」は、隅から隅まで観客で埋まるようにとの願いから、役者名は隙間の少ない勘亭流と言う独特の書体で書かれます。

この人々が行き交う南座から川端通りを二筋北にあがると、鴨川と合流する前の白川に出会えます。

柳が垂れる辨財天を右(東)に曲がると、まるでパリを想わせるような空間が広がります。固定された番傘の下で読書をする人、おにぎりをほおばる子供たちの姿もちらほら。とても落ち着く憩いの空間です。白川

目の前には、テラスのある「GION S(ギヲン・エッセ)」という名のカフェ&ダイニングがあり、川を隔てた向かいのビル2Fには、舞妓・芸妓さんの髪を結い続けて来られた日本髪の結髪師・石原哲男さんの私設資料館「日本髪資料館」があります。

古代から現在の舞妓、太夫まで115点の髪型と多数の髪飾りを展示しています。また、同ビル1Fの美容室やまとさんでは、本物の舞妓さんや太夫と同じように地毛で結い、化粧して衣装を着けて写真スタジオで撮影してくれる予約制の体験コーナーもあるようです。


祗園を限りなく愛した
歌人に出会える白川南通り

白川南通り

大和大路(縄手通)通を横切り、さらに東に進みます。
白川南通りと名付けられた石畳の道は格好の散歩道。着物姿が似合います。春にはソメイヨシノや枝垂れ桜が咲き、多くの花見客の目を楽しませてくれます。

枝垂れ桜の下には、祗園を限りなく愛した歌人・吉井勇の「かにかくに祗園はこひし 寝るときも枕の下を水の流るる」と彫られた碑が立っており、毎年11月8日には「かにかくに祭」が行われ、吉井勇をしのんで菊の花を備えて供養します。
この吉井勇氏の作品で、耳にしたことのある歌を見つけました。ゴンドラの歌です。

かにかくにの碑 ♪いのち短し 恋せよおとめ
赤き唇あせぬ間に
熱き血潮の冷えぬ間に
明日の月日はないものを♪

さらに、こんな詩もありました。

かく大き愛のすがたをいまだ見ず
この群像に涙しながる

この詩は円山公園を抜けて知恩院三門の手前に建つ「師弟愛の像」下に刻まれたものです。


タヌキを祭る辰巳大明神

巽橋

さらに東に進むと、舞妓さんや芸妓さんに扮した観光客の撮影スポット「巽橋」が見えてきます。

近くにはタヌキを祭神として祭る辰己大明神があります。

昔、巽橋にいたずらなタヌキがすんでおり、橋を渡る人を化かしては川の中を歩かせていたとか。難儀した人々はこの狸の為に祠を建て神様として祭ったところ、いたずらは止んだということです。
今では芸事の神様として祇園の舞妓たちの信仰を集めています。

辰己大明神 辰己大明神から左(西)に伸びる小さな通りが新橋通り。石畳に昔ながらのお茶屋や料亭が軒を連ね、重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。


辛抱して努力すれば事は成る

さらに花見小路通りを横切り、浄土宗 総本山知恩院方面に向かいます。

白川北通りはもともと東大路通りをはさんで知恩院黒門まで続く500mほどの道。その西半分を98年の改修以来『なすありの径(みち)』と名付けたそうです。古美術ストリートで知られる南側の新門前通りに平行した、とても静かな川沿いの道です。

なすあり地蔵 「なすあり」とは『明治12年に当時の府知事が中国の歴史書からの引用で“必有忍其乃有済…必ず忍ぶことあれば其れすなわち済す有り”…辛抱して努力すれば事は成る、という』言葉から付けたものだそうです。

有済(なすあり)橋の東詰には「なすあり地蔵」とかかれた小さな祠が建っており、昭和29年(1954年)に有済橋がかかる花見小路通りの水道管工事の際に白川の川底から出土したのがこのお地蔵さんなのだとか。土中で数百年もの間、じっと耐えたお地蔵さんを見て、工事を請け負った中村幸太郎さんが八坂の四若(しわか)神輿会にかけあってこのお堂を建てるに至ったそうで、今は地域の有志の方々の協力で、お地蔵さんのお世話をされているようです。


白川を泳ぐマガモ夫婦に癒されて

知恩院門前 東大路通りまで来ると、ふたたびあたりはにぎやかになってきます。

通りを北に上がった西側には、帆布カバンで有名な一澤信三郎帆布さんがあり、大通りを渡ると川のそばには、興味深いアンテイークのキモノショップ「やゝ」さんがあります。以前ネットで見たことのあるお店です。

さらに川沿いを進むと、古門と通称される知恩院の総門が建ち、川にはマガモの夫婦が仲良く泳いでいました。お孫さんを連れた家族が、川のそばに腰掛けていて、とてものどかな雰囲気です。

マガモ 三条通りの白川橋にたどり着くまでには、和菓子の「餅寅」さんがあり、その近くに明智光秀の首塚があります。
三条通を渡り、川より西の細い路地を北に上がると「枡富」さんがあります。以前知人に誘われて行ったことのある、おそばやさんです。普段好んで食べない私でもすっかりファンになってしまったほど、老舗の味は絶品でした。

普段なら、平安神宮の鳥居を目指して神宮道を歩くのですが、今回はその1本西の通りにあたる白川沿いを北上します。はじめて通るこの通りは、道幅も少し狭くなっており、のんびりと釣りをする人の姿も見られます。右下の写真は川の流れのまま、南を向いて撮ったものです。

白川 さらに進むと正面には「京都国立近代美術館」が見えてきます。オープンテラスでお茶を飲む人の姿をみつけたので、入ってみます。

美術館館内にはカフェミュージアムショップが設けられており、当館で開催された展覧会図録や、美術書、収蔵品のポストカードなど、他ではみられない作品がたくさん集められていました。館内はすべてバリアフリーになっていますので、ひと休みするには、おすすめです。

ここで白川沿い散策は疎水と合流し一旦終了です。
この川はさらに、琵琶湖疎水記念館から南禅寺、真如堂を経て銀閣寺方面につながっています。隠れた名所がたくさんあり、また時間をつくって、さらに北上してみたいです。
今度はリュックサックを背負って。

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