お楽しみ情報
京滋のくつろぎスポットをご紹介します。京都滋賀にある素敵なスポットがあれば、ぜひ情報をお寄せ下さい。

酬恩庵 一休寺で
こころ、癒して(09/08/25)

文・写真 北浦加代子

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一休寺の中門から庫裏(くり)を望む

ひぐらしの声に涼味を覚える頃。
京田辺の枯山水庭園を愛でながら、ゆったりと、夏の思い出に浸ってみませんか?

今回は「あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ」と、かわいい声が聞こえてきそうな一休寺をたずねてみました。

地図はこちらをご覧ください。



おいしい日本茶が楽しめる
京田辺の宇治茶カフェ

京田辺は、南北に沿って流れる東の木津川と、西の生駒山系に挟まれた緑豊かな田園都市。上質な土壌と栽培に適した温暖な気候に恵まれていることから、お茶やたけのこ、えびいも、田辺なすなど、おいしい農産物が採れることでも知られています。

中でも日本茶の頂点を極める玉露は、全国茶品評会で農林水産大臣賞を数多く受賞し、高い評価を得ています。

駅に到着した私は、乾いたのどを潤そうと、「宇治茶カフェ認定店」のひとつ、MAIKO茶ブティックに直行しました。抹茶や玉露などの日本茶を使ったオリジナルスイーツはもちろん、茶そばや玉露のおにぎりなどフードメニューも充実し、店内はたくさんの女性客でにぎわっていました。



総門
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境内の楓
絵になる風景が広がる石畳の境内
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境内には「このはしわたるな」の警告が!

お茶をすすりながら、
塩辛納豆をつまむ至福のひととき

JR京田辺駅から西へ1キロほど歩くと、一休さんのお寺で知られる臨済宗大徳寺派の禅寺、酬恩庵・一休寺(妙勝寺)にたどりつきます。道中は道しるべが多数あるので、とてもわかりやすい道のりです。

ここは、もともと正応年間(1288年〜92年)に大応国師が建てたもので、荒廃していた地をみて、康正2年(1456年)に一休さんが修復したと伝えられています。庵の名は、宗祖の恩に報いるという思いを込めて一休さんが名づけたようです。

宝物殿の隣には妙勝寺の旧跡にあたる開山堂があり、その中に妙勝寺を開いた大応国師の木像が安置されています。一休さんの懐の深さが感じられるようです。

一休さんは、ここで後半の生涯を送り、81歳で大徳寺住職となった時も、この寺から通いながら88歳まで静かな余生を送ったと伝えられています。主寝室は風雅な檜葺きの虎丘庵(こきゅうあん)で、非公開になっていました。

本堂は室町時代、方丈、庫裏(くり)、東司(とうす)などは江戸時代の建築物で、一休和尚像とともに国の重文になっています。

方丈とは禅宗寺院における住職の接客や仏事に使う居間を指し、庫裏は台所、東司はお手洗いのことを指すようです。重要文化財のお手洗いは、とても珍しいものです。

総門から中門に続く石畳の参道には、手入れの行き届いた楓が青々と茂り、絵になる風景が広がります。
庫裏、方丈へと続く中門をくぐると、樹齢400年というしだれ松が玄関先に植えられ、中に入ると、日差しの強い外とはうってかわり、とてもひんやりしています。奥には拝観順路の終着点と思われる板の間にドンと構えたいろりがあり、はじめてなのに懐かしい、日本家屋の原風景に出会えます。

方丈の周囲三方には、石や砂で自然の美を表現した禅院式の枯山水庭園(名勝指定)が設けられ、訪れる人の目と心を楽しませてくれます。
砂紋(さもん)が描かれた禅苑庭園の南庭からコの字型につながる廊下を進むと、十六羅漢の遊行するさまを庭石で表現した東庭があります。
石塔、石灯籠、手水鉢などが配され、石組で枯れ滝を表現した北庭は、禅院枯山水の蓬莱庭園というのだそうです。


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境内で掃除をする一休さん
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庫裏にあるいろり

南側の縁側に腰を落としながら庭を眺めていると、不思議と心が落ち着きます。
一休さんはどんな思いで、毎日この庭を眺めていたのでしょう。

入り口で見たいろりの前に座ると、奥から一休寺納豆とお茶を出してくださり、「この納豆は一休さんがつくり、その製法は代々の住職に伝えられてきています」と、教えてくれました。

以前、大徳寺でも同じような納豆(大徳寺納豆)をいただいたことがありますが、一休さんが持っていかれたものだということを、この時初めて知りました。

材料や製法などは500年たった今でも、ほとんど変わっていないそうです。見た目は一休寺納豆のほうがふっくらとしていて、味はまろやか。お茶はもとより、お酒の友としてもおすすめです。


中秋の名月の10月には、一休寺薪能が開催されます。
詳しくはこちらをごらんください
薪能とは、黄昏時に野外で薪を燃やし、そのあかりのもとで行う能のこと。日が落ちてから幕が開く一休寺薪能は、あかりに照らし出された舞台に鼓や笛の音が響き渡り、あたりは幻想的な雰囲気に包まれます。
本来は火を使用しますが、重文の建物が多いため、照明で代用するとのことです。


木津川に架かる「流れ橋」に
先人の知恵を学ぶ

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流れ橋
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流れ橋から堤防に沈む夕陽を望む

京田辺から少し北上し、ロケ地によく使われるという木津川の上津屋橋(こうづやばし)に立ち寄りました。
木津川に架かる八幡市と久御山町を結ぶ、通称「流れ橋」です。
昭和26年に架けられた現存する最長級の木橋で、全長約356.5mもあるそうです。
当時は予算がなく、かといって普通の木造橋では増水のたびに流されてしまうことから、水の流れに逆らわない構造の橋が考案されました。

木津川が増水すると橋板が自然に浮かび、ワイヤーで繋がれた橋板が吹き流しのようになり、水が引けば元にもどるというしかけです。

それにしても、昔の人の知恵ってすごいですね。
流れ橋とはよくいったものです。


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