●シャクナゲとツツジに魅せられて、 宇治・三室戸寺へ(10/04/27)文・写真 北浦加代子
新茶の香りが恋しくなる季節。 宇治の『花の寺』として親しまれる三室戸寺では、2万株のつつじや1千本のシャクナゲがとても鮮やか。 今回は、新緑と共に赤、白、ピンクに染められた大庭園を訪ねてみました。
地図はこちらをご覧ください。 京阪三室戸寺駅から京阪バスの時刻表はこちら。
まるで植物園のような 5千坪の大庭園 京阪宇治線の「三室戸」駅から国道7号線を横切り、なだらかな坂道を15分ほど歩くと、西国観音霊場十番の札所で知られる三室戸寺に到着します。
由緒によると、ここは本山修験宗の別格本山で、約1200年前(宝亀元年)、光仁天皇の勅願により、三室戸寺の奥、岩淵より出現された千手観音菩薩を御本尊として創建されたとのことです。
三室戸寺は、5千坪の大庭園に桜、シャクナゲ、つつじ、あじさい、ハス、もみじなど、四季おりおりの花を愛でることができることから別名『花の寺』とも呼ばれています。
『つつじ園』には、2万株の平戸つつじ、霧島つつじ、久留米つつじなどが咲き誇り、その規模は関西屈指のものとして、地元はもとより遠方からも観光客がたくさん訪れます。
受付(拝観料/一般500円)を過ぎると、左手には真っ赤な常盤マンサクの花々が出迎えてくれます。
そして右手には、西洋アジサイ、額あじさい、柏葉アジサイ、幻のアジサイ・七段花など、30種・1万株のあじさいが植えられ、梅雨の時期になると、訪れる人を魅了させてくれます。
新緑を愛でながら、ゆっくりと60段の階段を登っていくと(少し急な坂道ですが、車道もあります)、本堂前には、200鉢もの『蓮(ハス)園』の鉢が一面に広がっています。夏になると大賀ハス、古代バスなど100種ものハスが花開く光景は、さながら極楽浄土のようだと言われています。
本堂前には、狛牛と対面して狛犬ならぬ狛兎が、直径60cmの大きな玉を抱いており、中の卵型の石が立てば願いが通じると言われています。
また対面する狛牛の口の中には石の玉があり、これをなでると勝運がつくといわれ、宝勝牛と名付けられています。隣には「若乃花」「貴乃花」と書かれた2つの大きな手形があり、お2人もここで勝運を祈ったようです。
今年(2010)の春は気温が不安定で、「つつじが満開になるのは、ゴールデンウイークの頃かもしれない」(寺務所の方)とのことですが、かわりに赤やピンク、白といったシャクナゲの花が山肌に沿って色鮮やかに咲いていました。 垂れ桜を愛でながら みむろとうどんに舌鼓
西国十番札所・三室戸寺境内で、ひとやすみしようと「はんなりかふぇ・お花見処 花の茶屋」に立ち寄りました。
花の茶屋には、赤い毛氈(もうせん)を敷いた床几に番傘が置かれ、情緒あふれるたたずまいが緑の中にとても映えています。床几に腰掛け、あたたかい“みむろとうどん”に舌鼓を打ちながら、今年最後の垂れ桜を、たっぷり堪能させていただきました。
境内では、池泉や枯山水など、手入れの行き届いた庭園の風景も楽しめます。
重層入母屋づくりの本堂と、その東側には、鐘楼と三重塔。 鐘楼のそばには、「浮舟古跡」と刻まれた古碑があり、250年前の寛保年間「浮舟古跡社」 を石碑に改めたものだそうです。
その折古跡社のご本尊「浮舟観音」は当山に移され、今に浮舟念持仏として、伝えられているそうです。
源氏物語を偲ぶ 宇治の風景
特に世界文化遺産で有名な平等院の対岸は、朝霧橋や宇治十帖のモニュメントがあり、フィクションでありながら、何故か『源氏物語』に登場する人々の姿が見え隠れしてしまうから不思議です。
この辺りは、世界文化遺産で知られる宇治上神社のほか、宇治神社や山吹が美しい恵心院などが隣接しています。 恵心院ちかくの茶器の窯元「朝日焼」を少し覗いてみました。
奥様は、赤い煎茶器に、おいしい宇治茶を淹れてくださり、釉薬のことをお伺いすると「この赤は、銅の還元の発色による辰砂(しんしゃ)釉です。とても不安定なうわぐすりで、昔から『辰砂に凝ると身上(しんしょう)つぶす』とも言われ、同じ窯で焼いても微妙な炎の流れの加減か、実にさまざまな赤になったり消えてしまったりします。不安定なうわぐすりのみが見せてくれる、心に沁みる美しさがありますね」と丁寧に教えてくださいました。
また奥には見事な登り窯があり、15代目のご主人は窯を焼く度、愛宕神社にお参りに行き、よい作品に出会えるよう祈るのだそうです。宇治の土で焼かれた器で宇治茶をいただくという贅沢なひとときを過ごしました。
宇治は、まだまだ見所がもりだくさんです。次回また機会があればご紹介したいと思います。この日は夕陽に染まる空を見ながら、宇治の町を後にしました。
|
▲TOP