お楽しみ情報
京滋のくつろぎスポットをご紹介します。京都滋賀にある素敵なスポットがあれば、ぜひ情報をお寄せ下さい。
(12/06/05)
 文・写真 北浦加代子

木之本

日常のけんそうから離れ、琵琶湖の北を目指します。
軒下に馬つなぎの金具が残る旧本陣や、
杉玉がぶらさがる造り酒屋が 軒を連ねる北国街道の宿場町。
今回は、心安らぐ隠れ里、
木之本宿を歩いてみました。

地図はこちらをご覧ください。
詳細マップはこちら。

 

旅人を温かく迎え入れてくれる
木之本宿の人たち

1853(嘉永五)年創業のダイコウ醤油
木之本
昭和の香り漂うダイコウ醤油さんのレジスター
木之本
町づくり活動の拠点となる「きのもと交遊館」

街道を歩き始めると、学校帰りの中学生たちが軽く会釈をしながら「こんにちは〜」と出迎えてくれ、とても心が和みます。

北国街道沿いにある木之本は、木之本地蔵院の門前町で、宿場町としてもにぎわった町。今は、車が行き交う舗装道になっていますが、昭和の初め頃までは、道の中央に小川が流れ、柳の木が植えられていたようです。

北国街道と北国脇往環の分岐点近くには、しょうゆ造りの老舗「ダイコウ醤油」があり、店内をのぞくと、食欲をそそるしょうゆの香りが、ほんのりと漂ってきます。

「木之本は水の質がいいので、昔からしょうゆや酒など醸造業が栄んな地域でもあるんですよ」という6代目の大杉さん。 原料の大豆を蒸し、いった小麦と種こうじを加え…と、気の遠くなるような行程を経て造られるしょうゆは、地元や京都の有名料理旅館などでも使われているそうです。

店のカウンターには、昭和の趣をそのままにしたレジスターや、奥には、壁掛け電話機が大切に保管されていました。

北国街道を北に進むと、文化の発信基地「きのもと交遊館」が見えてきます。昭和10年に湖北銀行木之本支店として建てられたもので、大理石のカウンターやフローリングブロックの床など、ぜいたくな造作が施されています。

「きのもと交遊館」では今、羽柴秀吉と柴田勝家の賤ヶ岳合戦をテーマにした『長浜戦国大河ふるさと博』(有料)が開催。歴史ナビゲーターによる解説付きでジオラマや映像が楽しめるようになっています。

木之本
元はたごやだったという手作り雑貨の店・かめや
木之本
450年以上の歴史を持つ古酒蔵・冨田酒造
サラダパンは、テレビでも紹介され有名に
木之本
片目をつむった身代わりカエル

きのもと交遊館」の斜め向かいには、元はたごやだったという手作り雑貨店・かめやがあり、店主が自然の草木を使って手作りしたリースや人形、アクセサリーなどが並べられていました。はたごやだった頃の話を伺うと、気前よく昔の外観写真や街道のモノクロ写真を見せてくれました。

 

魯山人も愛した純米吟醸「七本鎗」

かめやの斜め向かいには、大きな杉玉が飾られた「冨田酒造」があります。

店内に入ると『七本鎗』と書かれた扁額(へんがく)が真っ先に目に飛び込んできます。

おおらかでダイナミックなその文字は「まだ、福田大観と名乗っていた頃の北大路魯山人のもの」と聞き、びっくり。魯山人の書いた文字はそのまま、冨田酒造のメーンブランド『七本鎗』のラベルとして使用されていました。「鎗」の文字はあえて金偏になっているのも特徴です。

『七本槍』とは、賤ヶ岳の戦いで功績をあげた加藤清正・福島正則・片桐且元・加藤嘉明・脇坂安治・平野長泰・糟谷武則ら7人を賤ヶ岳の七本槍と、たたえたことに由来。賤ヶ岳の戦いの後、秀吉は大坂(当時)で名をあげたことから、勝利の酒や、縁起の良い酒として伝えられているようです。

 

木之本のソウルフード「サラダパン」

富田酒造から2軒隣に、地元はもちろん全国的にも有名なパンを作る「つるやパン」があります。

創業以来、作り続けて50年というロングセラー「サラダパン」は、コッペパンに、細かく刻んだタクワンとマヨネーズをサンドした素朴なもの。

ひとつ買っていただきましたが、甘みのあるふわふわのパンに、たくわんとマヨネーズの酸味がマッチして、とてもおいしかったです。当時はマヨネーズも手作りされていたそうで、斬新な味わいだったのでしょうね。

 

心優しい身代わりカエルさんと
おいしい草餅に癒されて…!?

「木之本地蔵院 (浄信寺)」は、目の仏様として知られる時宗の寺。
国の重要文化財にもなっている木之本地蔵の本尊は秘仏で直接拝むことはできませんが、これを模した6mの大きな銅像「木之本のお地蔵さん」が境内に立ち、参拝客を出迎えてくれます。

お地蔵様の足元には、片目をつむった「身代わりカエル」が数多く奉納されています。
地蔵院のカエルが、目を患った多くの人々を思い「すべての人々の大切な目が、お地蔵様の御加護をいただけますように」また「すべての人々が健康な生活を営むことができますように」と、自らが身代わりの願を掛け、片目をつむって暮らしているそうです。

木之本には他にも、養蚕が盛んな土地柄から生まれた桑酒の「山路酒造」や、平成19年に100周年を迎えたという「江北図書館」、大納言小豆と自家栽培のよもぎの名代草餅がおいしい老舗「菓匠禄兵衛」など、おいしいお店や散策スポットも盛りだくさん。レンタルサイクル(9時〜17時/500円)もあるので、訪れてみてはいかがでしょう。

木之本 木之本
国内でも珍しい桑酒を造る山路酒造。桑酒は詩人・小説家の島崎藤村も愛飲したという 日本の薬剤師の第1号といわれた薬店。古い薬の看板が残っている

木之本

サバ寿司で有名な料亭すし慶。手入れの行き届いた庭を眺めながらの食事もできる。奥の蔵にはギャラリー

木之本
北国街道と北国脇往環の起点に立つ道しるべ
木之本 木之本
隣家との境をつけた“うだつ”のある町家。防火と装飾を兼ねて江戸時代に始まった 室町時代から昭和初期まで年2回、この地で木之本牛馬市が開かれた
木之本 木之本
家内安泰などの願いが込められた飾り瓦(鬼瓦) 子どもたちがトイレを借りに入る姿もほほましい
木之本 木之本
木之本地蔵院(浄信寺)。地蔵大銅像の足元や境内のいたるところに身代わりカエルが奉納されている

大正時代から続く「菓匠禄兵衛」。名代草餅はネットで買い求めることもできる