お楽しみ情報
京滋のくつろぎスポットをご紹介します。京都滋賀にある素敵なスポットがあれば、ぜひ情報をお寄せ下さい。
(12/08/07)
 文・写真 北浦加代子

鷹峯

北大路通りから、なだらかに伸びる鷹峯街道。
標高は鷹峯小学校で約160m。
比叡山の叡山ケーブル八瀬駅とほぼ同じ高さなのだそう。
木陰にたたずむと、吹く風も爽かです。


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京都島原の名妓・吉野太夫に触れる常照寺と
こころを癒す源光庵

 
鷹峯
吉野大夫が寄進した「吉野門」
常照寺の帯塚

京の七口の一つ「長坂口」で知られる鷹峰。
大文字山(左大文字)の北側には、東から鷹峰・鷲峰・天峰の鷹峰三山が連なり、秋になると、赤や黄色の鮮やかな彩りで観光客の目を楽しませます。また花札の8月のススキは、この鷹峯の山を模したものとも伝えられています。

鷹峯三山の麓には、吉野太夫ゆかりの常照寺や「悟りの窓」や「迷いの窓」で知られる源光庵、本阿弥光悦一族の光悦寺などが点在しており、まずは「鷹峰源光庵」バス停近くの常照寺に向かいます。

常照寺は、日乾(にっけん)上人によって開山された寺。入り口にある朱塗りの山門「吉野門」は、江戸初期の名妓・吉野太夫が私財をなげうって寄進したと伝えられています。

吉野太夫は江戸前期の豪商で文化人でもあった灰屋紹益(はいやしょうえき)に見初められて妻となり、また夕霧太夫、高尾太夫とともに寛永三名妓天下随一の太夫だったそうです。

教養が高く、和歌、連歌、俳句、書、茶道、華道、音曲、囲碁などの諸芸を身につけていただけでなく、その美貌は遠く中国にまで伝わっていたそうです。何ともうらやましい…。

毎年4月の第2日曜日には、吉野太夫をしのぶ「花供養」が営まれ、境内には、桜が舞い散る中、あでやかな衣装に身を包んだ太夫が太夫道中を繰り広げる写真も数多く置かれていました。

鷹峯
左から「悟りの窓」「迷いの窓」
鷹峯
足跡が残る「血天井」
大虚庵を囲む「光悦垣」
鷹峯
光悦寺から見る鷹峯三山

続いて源光庵に向かいます。
ここは、テレビでもおなじみの「悟りの窓」「迷いの窓」が本堂にしつらえられた曹洞宗のお寺。

円形の「悟りの窓」は「禅と円通の心」を表し、角形の「迷いの窓」は「人間の生涯」である生老病死の四苦八苦を表しているのだそうです。

住職の鷹峰龍雄さんは、「人はみな、何らかの悩みを持っています。遠く先の悩み事を嘆くより、まず足元の悩みを自問自答してみる。答えはすべて自分が持っている。でも、そうこうしている間にも、今が過去になっていきますよ(笑)」と話してくださいました。

うーん…難しい…。あんまり考え込まない方がいいのかも…。

本堂にある天井は、家康氏の家臣だった鳥居元忠(とりい もとただ)が自刃した時の伏見城の遺構。「血天井」と呼ばれる引きずったような足の痕跡は、廊下の天井に生々しく残っており、ここで供養しているのだそうです。

 

優れたデザインセンスを持つ
本阿弥光悦の寺

江戸時代の初め、工芸家、書家、画家、出版者、作庭師、能面打ちなど優れたデザインセンスを持ち、すべてのジャンルに名品を残した本阿弥光悦。光悦は、一族を率いてこの地に移り住み、芸術村を開きました。本阿弥光悦一族の寺、光悦寺です。

山門をくぐると長い参道が続き、セミの声のボリュームもどんどん上がって行きます。日差しは強いですが、木陰に入ると心地よい風が吹いてきます。

こけむした境内には、大虚庵や三巴亭、了寂軒など5つの茶室が点在し、大虚庵には「光悦垣」と呼ばれる珍しい竹垣が見えてきます。竹で組まれ頂部にゆるい曲線を描いているのが特徴のようで、光悦が好んだことに由来しているそうです。

光悦寺は紅葉の名所として知られる地ですが、見頃の頃は残念ながら休館で見学できなくなっていました。

 

光悦寺や源光庵を背に鷹峯街道を南へ下がると、今も昔ながらの製法で醤油を手がける京醤油処の老舗「松野醤油」があり、すぐ南側には3万5千坪の土地に庭園が広がるリゾート地「しょうざん」があります。

「しょうざん」には、染織ギャラリーをはじめレストラン、結婚式場などが点在し、夏には水のせせらぎに憩う川床『溪涼床』が人気を集め、壮大な日本庭園内を流れる紙屋川(天神川の上流)の上の川床で、京の夏の味が堪能できるようになっていました。完全予約制。

鷹峯
鷹峯で素朴なそばが味わえる食事処「光悦茶家」。地元で採れた京野菜・辛味大根の薬味が絶妙 夏休み中の子どもたちが集まる年に一度の「てらこや修養道場」
鷹峯 鷹峯
窓の下部分が欠けた太夫ゆかりの茶室遺芳庵(いほうあん)。太夫はこの窓に完全ではない自分の姿を映し、自らを戒めていたのだそう 常照寺の本堂前に置かれたハスの花。五千坪にわたる広大な境内には茶花もたくさん植えられており、四季を通じて庭を鮮やかに彩る
鷹峯 鷹峯
源光庵の本堂。天井は「血天井」 「悟りの窓」と「迷いの窓」の向こう側にある庭園
鷹峯
光悦寺から京都市内を見下ろす

今も昔ながらの製法で醤油を造る京醤油処「松野醤油」