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障害者就労の懸け橋に
社員が相談役 新卒者にセミナーも

京の人材サービス会社が支援事業(2009/09/08)

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学生たちへの支援について話しあう倉さん(右)と中村さん(京都市下京区)

 民間企業の障害がある人の雇用は十分ではない。障害者法定雇用率は1・8%だが、昨年の平均は1・59%。近年上昇傾向にあるとはいえ、未達成のままだ。この現状改善を目指して京都市にある人材サービス業のオムロンパーソネルは、3年前に社内に「障がい者就業支援グループ」を立ち上げた。障害がある社員が相談に乗るなど当事者によるサポートに力を入れ、企業と障害者の懸け橋になりたいという同グループを訪ねた。

 グループマネジャー円尾浩二さん(47)によれば、グループ立ち上げのきっかけは、自社の法定雇用率達成への取り組みだったという。

 人材派遣、人材紹介などを行う人材サービス業では、障害者の派遣を求める企業が少なく、派遣スタッフとしての障害者雇用は難しいのが現状だ。このため模索が続いたが、自社ホームページの作成や管理を障害がある人たちに任せたところ、その実力が高い評価を得たことから雇用が進み、今年6月現在の雇用率は2・26%となっている。

 「この体験を事業化できれば、社会貢献もできる」(円尾さん)と、2006年にグループが発足する。当初は中途採用のための人材紹介を手がけたが、障害がある新卒大学生が十分な情報が得られないままに就職活動をしている現状を知り、07年から学生支援を始めた。

 今年は学生対象の「就活セミナー」を2月から7月まで月1回開催し、京都、滋賀、大阪、兵庫から14人が参加した。現在内定を得ている人もいる。8、9月は就職活動を始める前の心構えなどを考えるセミナーを開催中だ。これまでにグループがかかわった障害者で50人以上が実際に企業で働いている。

 グループは円尾さんはじめ5人、うち3人が車いすで生活している。その一人、中村武史さん(52)は、「支援事業は簡単なものではありません。私たちも苦労していますが、ご本人はもっと苦労します。それだけに決まったときはものすごくうれしい」とやりがいを感じている。

 3人のうち最も若い倉あゆみさん(24)は、「周囲で就職活動という言葉が飛び交うようになっても自分はどうしていいのか分からなかった」と学生のころを振り返る。「この会社でのインターンシップで、障害がある先輩の話を聞いて意識が変わりました。自分をマイナスの方へばかり追い込んでいたと反省し、前進する勇気を持てました」。だが意気込んで受けた面接はことごとくだめだった。壁は厚かった。「ここで働けることが本当にうれしかった」。

 今は学生の相談窓口を務めるが、「自分を見ているような感じ。当事者同士として本音の話ができるように努力しています」。内定が目的でなく、企業で長く働くことが目的であること、自分に何ができるかよく知って、企業側の理解を得る努力をすることなど、体験に基づくアドバイスを心がける。「自分から引いたらだめ。相手側にちゃんと判断してもらうことが大事です」。

 企業側にも変化があるという。社会的責任を重視、障害者雇用に前向きな企業は増えている、と円尾さんはみる。「企業の人事担当の方々に、この仕事ができるかどうかという視点だけで見ないで、『人』そのものを見ていただけるよう働きかけながら、求職者と求人者のいい出会いを積み重ねていきたいですね」。