義援金特集(2011/08/02)

タイトル

 京都新聞社と京都新聞社会福祉事業団は、東日本大震災も発生後、個人、企業、団体の皆さまから寄せられた計12億5000万円にのぼる救援金(義援金)を被災6県(宮城、岩手、福島、茨城、千葉、青森)の災害対策本部などへ寄託してきました。
 配布状況を見るため、当事業団では、20日から3日間にわたり、宮城、福島両県の被災地に記者を派遣しました。
 当事業団が送金した救援金は、各県の災害対策本部などの各配分委員会を通じて各市町村に配分され、「お見舞金」として被災者の手元に届きつつあります。
 これまでに被災県が市町村に第1次義援金として配分した状況をみると福島県88・5%、岩手県73・6%、宮城県70・6%などでした。
 ただ、地震・津波で被災した役場もあり、一部の市町村では人手不足のうえに膨大な災害関係業務に追われ、義援金の支給要件となる被害の認定や被災者確認に手間取るような状況も見受けられます。
 被災県では第2次以降の義援金配分を整える方向にあります。当事業団では、今後も皆さまから寄せられた救援金が被災者のもとに着実に届くように努める所存です。 (公益財団京都新聞社会福祉事業団)


 東日本大震災発生から5カ月が過ぎようとしている。京都新聞社、社会福祉事業団では震災直後から救援金(義援金)の受け付けを開始し、2次にわたり計12億5000万円を宮城、岩手、福島など被災6県の災害対策本部に送った。京都、滋賀の方々から当事業団に寄せられた救援金はどのように生かされているのか。第3次送金を前に20〜22日の3日間にわたり宮城県と福島県を訪ねた。救援金は、生活再建につながる「大切な資金」として被災者を勇気づけていた。(京都新聞社会福祉事業団編集委員 半田信夫)




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仮設住宅での心のケアを図る、つなぎ支援員の訪問を受ける被災者の男性(仙台市太白区)

復興へ大きな支えに
まず身の回り品購入

仙台の仮設住宅


 仙台市太白区の再開発用地にある「あすと長町仮設住宅」。区内で被災した男性(65)は6月にようやく一家で暮らし始めたばかり。救援金を役立て生活再建を目指す。

 男性はテナントビル2階を住居としていたが震災で損壊し小学校などの避難先を転々。妻子は当初、スーパーの屋外トイレで過ごしたという。

 4月始めに救援金の交付を申請。アパートが区に「半壊」と認定されて異議を申し立て「全壊」と認められたことから6月7日にあらためて申請。区に再三問い合わせ、25日に振り込まれるとの確約を得たという。

 最初の配分は45万円(中央分35万円、県分10万円)。男性は「家財道具がすべてだめになった。衣料など身の回りの品を買うのに助かります」と話した。

 一方で、心のケアを目的に見守り活動を行っている団体の芳賀ヒロ子さん(70)は「住民は家族離散や引っ越しのストレスも抱えている」とし、救援金に目が向かない厳しい現実を指摘した。

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ドーム内の一角で義援金配布の事務を行う富岡町役場の大和田さん(左)ら(福島県郡山市、ビッグパレットふくしま)

散り散り住民に届けるため
職員ら懸命の連絡作業

郡山の仮庁舎

 福島県郡山市にあるドーム状多目的施設「ビッグパレっトふくしま」に、同県富岡町と川内村の仮庁舎がある。両町村は福島第1原発事故の警戒区域に指定され、住民の多くは避難で散り散りになった。

 富岡町役場で義援金を担当するのは大和田豊一さん。事故後いったん西隣の川内村に移ったが同村も警戒地域になり、3月中旬にここに来た。ドーム内では今も被災者約300人が暮らし、北側に大和田さんらの窓口がある。

 町の人口は約1万6000人。避難の際に一緒に移ってきた約2000人以外は親戚を頼るなどで全国に散らばった。大和田さんらは一世帯40万円の第1次義援金配布を4月下旬から始めたが、宛て先人不明で戻ってくる通知書も多かった。このため携帯電話の番号を割り出し、連絡をとる作業に追われ5月の連休明けまで多忙を極めたが、7月中旬までにほぼ行き渡ったという。今後は1人27万円の2次配分にかかるが、審査会の手続きがあり、被災者が手にするのは9月以降になりそうだ。

 ビッグパレットの廊下には彦根市の城北小から贈られた「生花力生命力」の文字が貼られている。大和田さんは「家に帰れないと心がすさんでくる」そんな時、お金、物資、励ましの心、すべてが大変ありがたかった」と話した。

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不明者の相談窓口も

石巻市役所

 宮城県石巻市=写真=は、16万3000人の住民のうち約5900人が死亡または行方不明となった。JR仙石線石巻駅前にある市役所には、今も訪れる被災者が絶えない。

 義援金を取り扱う福祉総務課には北海道江別市や兵庫県姫路市から応援の職員の姿もあった。

 同課には民間賃貸住宅を対象にした応急仮設住宅申請窓口も。同じフロアには遺体未発見者相談窓口や弁護士会による無料相談窓口も設けられ、非常時の対応がとられていた。

 市役所から約2キロ南の南浜町一帯は津波で大部分の家屋が倒壊し更地状態。工場や病院は今も再開できない。

混乱過ぎ 支給進む

宮城県

 被災各県は、義援金を集約し市町村を通じて被災者に届ける災害対策本部を置く。宮城県によると、県内市町村では事務の膨大さから当初は混乱もあったが、必要人員がそろうとともに、ようやく支給が進むようになったという。

 配布の障害となったのが、送金者データと罹災(りさい)証明書の作成。データは被災者からの申請を審査し送金する際の文書で、証明書は支給金額の基準となる全半壊など住居被害の程度を示す。

 膨大な申請を前に職員の手が回らず時間がかかることもあったという。その後、他県からの応援職員や県庁職員がローテーションを組んで市町村に入り、5月下旬には作業がスムーズに流れるようになったとしている。

 県の独自配分としては、震災孤児に50万円のほか、母子・父子世帯、高齢者・障害者施設入所者も対象としている。

 原発事故のあった福島県は、全半壊世帯と福島第1原発から30キロ圏とそれ以外の計画的避難区域の世帯―に一律5万円を県分で上積みした。2次分では震災孤児に100万円、震災遺児に50万円のほか、市町村が独自基準で配分できるように45市町村分77億3600万円を当てる方針。

 岩手県では、住居被害に比べ死亡・行方不明者への見舞金が遅れている。原因は▽不明に関する申請が震災後3カ月を経過した6月11日以降に提出されている▽受給者である遺族を確定させるため、申請者が他の遺族から同意書を得る必要がある―を挙げている。

甚大な被害受け 異例の2本立て

 義援金の原資は二つある。日本赤十字社、中央共同募金会、日本放送協会などの受付団体に寄せられたもの(中央分)と、各県の災害対策本部に届き県が直接行うもの(県分)だ。京都新聞社会福祉事業団からの救援金(義援金)は県分に入る。

 被害の甚大さと広域性から各団体が中央で対応したため、二本立てとなったが、県と市町村を経由して被災者にわたる流れは同じだ。

 中央分の第1次配分は国が決定しており▽死者・行方不明者=35万円▽住居全壊=35万円▽同半壊=18万円▽原発避難指示・屋内退避指示圏域の世帯(福島県のみ)=35万円。

 中央分2次と県分は県が独自に決定でき、それぞれの実態に合わせて配分できる。

京都新聞社会福祉事業団からの送金額と県分第1次義援金総額および配分率(7月15日または22日現在)

 送金額第1次県分総額配分率
宮城県4億5000万円112億5076万円70.6%
岩手県3億6000万円44億0892万円73.6%
福島県3億2000万円46億9000万円88.5%
茨城県6000万円23億5800万円64.2%
千葉県3500万円3億9710万円75.1%
青森県2500万円5億1000万円96.2%