特集

チャリティー美術作品展 20日から(2011/10/11)


作家と愛好者を橋渡し

写真
中路融人さんの「赤富士」

 

「世の中の役に」と力作出品
初回から続ける中路融人さん

京都市西京区の日本画家中路融人さん(78)は、初回から作品を寄贈している。「困っている人を助ける年に1度の機会」と、筆に力を込める。

 中路さんは風景画が専門で、今年の出品作は「赤富士」。実際に赤い富士山が見られる機会は数少ないというが、何十年も写生に行っている中路さんは、実物の富士山から得た心象風景をもとに神秘性を再現した。

 「絵の大小にかかわらず真正面から全力投球」が中路さんの信念。今年も「どこへ出しても恥ずかしくない絵ができた」と自信を示す。チャリティー美術作品展については「年々規模が大きくなっているように思う。美術を通じて、世の中に役立つことをしたい」と話している。

 京都新聞社会福祉事業団と京都新聞社が毎年開催している「ともに生きる チャリティー美術作品展」は今年で29回目を迎える。これまで福祉活動を支えるとともに、入札を通じて作家と美術愛好者をつないできた。

 作品展には文化功労者や人間国宝を含む、美術、工芸、宗教など各界から寄贈された日本画、洋画、陶芸、書、色紙などを展示し、各作品を入場者に入札してもらう。

 落札者の善意は京都新聞社会福祉事業団の活動資金に充てる。2010年には5756万円に上り、経費を差し引いて3478万円の寄金が得られ、活動を支える柱となっている。

 1983(昭和58)年秋、81年の国際障害者年の理念を生かし、福祉基盤の充実を図ろうと、上村松篁氏、梅原猛氏ら16人を発起人に初めて開催された。初回は480人から約600点の出品があったが、年々賛同し出品する人が増えている。

色紙
吉永小百合さんの色紙
 本年は約1400人から約1700点が寄贈された。芸能界からも作品が寄せられ、吉永小百合さんからは「この道は長いけど歩きながらゆこう」の色紙=写真=が届いている。



今回は被災者にも

 得られた寄金は、最近では特別養護老人ホームに介助用車いすを2010年度までの3年間で計106台贈ったほか、在宅のお年寄り支援のための介護用品、配食サービス、子育て支援などにも充てている。今回は一部を東日本大震災の被災者に届ける。

 一般入場者が気に入った作品を手軽に入手できるのも特徴の一つ。1枚に5点まで記入できる用紙に、1点1万円以上の価格を付け入札。落札者には11月上旬に通知する。作品展をきっかけに美術品の収集に興味を持った人もあり、また観光で訪れた遠方の人からの入札もある。

 今年は10月20日から24日(午前10時から午後8時 最終日は午後4時閉場)まで京都燗屋グランドホール(7階)で開く。入場無料。
 第 29 回京都新聞チャリティー美術作品展 寄贈者一覧はこちら(PDF/1.1MB)



ひらめいたら財布と相談
入札続ける馬庭さん

 この6月まで豆腐店を経営していた馬庭鉄朗さん(57)=京都市下京区=は、作品の入札を始めて7、8年になる。

 画家の父親を持つ知人が勧めてくれたのがきっかけ。「ぱっと見ていいなと思ったものを、財布と相談して入札します」という。

 好きな作家はフクロウを描く日本画の吉村和起さん。毎回、どんな絵が出てくるか楽しみにしており、一昨年は「白ふくろう」を落札した。これまで書や洋画も落札している。

 どんな作家がいるのか美術年鑑で調べ、気に入った作品は何点も入札する。「当たってほしい半面、全部落札できたら購入資金をどう手当てしようか。そんな宝くじのような感覚を楽しんでいます」と話している。