特集

東日本大震災から1年
避難者を支え続けるために
(2012/03/13)

 東日本大震災の津波被害や福島第1原発事故で、京都や滋賀に避難する人々への支援の連携に向け、模索が始まっている。京都府では今月初め、「地域力再生プラットフォーム会議(事務局=府危機管理・防災課など)」が開かれ、市民団体や行政などが支援のネットワークづくりで意見を交わした。


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避難者支援に向けた連携について話し合った地域力再生プラットフォーム会議 (1日・京都市上京区)

 京都府などがあっせんする住宅に入居する避難者は295世帯810人(8日現在、府災害支援対策本部調べ)。京都市伏見区の桃山公務員宿舎をはじめ山科区、宇治市、亀岡市の公営住宅などで暮らす。

 プラットフォーム会議には、東北出身の主婦らが中心になり避難者に役立つ情報誌を作る「ほっこり通信」、お年寄りの健康と生きがいづくりを支援する「健生ネットワーク京都」、避難者と地元の人のつながりを目指す「みんなの手」、避難者が集う「福興サロン和(なごみ)」を運営するNPO法人ハイビスカスなどの市民団体が集まった。京都災害ボランティア支援センター福島支援特命チームや、避難者の交流会を支える山科区社会福祉協議会からの出席もあった。また府議会議員、企業や京都新聞社会福祉事業団などの助成団体も参加した。

 会議では、避難者側から住宅や雇用に関する問題、二重生活による経済的負担など避難者の生活状況も報告され、▽住宅情報が一覧できるサイトの立ち上げ▽避難者へのアンケート調査—などの案が出た。


住宅情報一覧サイト、定期的な交流会
京滋の支援団体 連携模索

 参加した団体からは、住宅問題などテーマごとに支援団体などが集まり解決策を探る方法や、助成団体の連絡網づくりの推進なども提案された。

 一方、滋賀県では「滋賀県内避難者の会」が設立されており、同会によると県内には民間住宅を含め約150世帯390人が避難している。

 同会は昨年12月に第1回交流会を開き、大津市の事務局を拠点に約30世帯に生活情報に関するメールニュースを配信する。代表の井上宗純さんは「会の存在を知らない人はまだまだ多いと思う」と話し、県社協などの支援を得て定期的な交流会を開催する方向だ。


奨学金や福祉活動支援に拡充検討
京都新聞社会福祉事業団

 東日本大震災発生から1年が経ち、いま京都、滋賀の地域では、地震・津波の被災や福島第1原発事故の避難者の支援に向き合っています。

 当事業団には寄付者の方から「避難者支援に役立ててください」という声が届きます。当事業団では、昨秋のチャリティー美術作品展にご出品いただいた作家の方々のご賛同を得て、同展の寄付収入の一部を避難者支援の事業資金として確保し、昨年末には福島県からの避難者離散家族再会の支援活動に助成しました。

 新年度は、高校生らへの奨学金支給、子育て仲間応援、福祉活動支援などの事業を活用し、避難者支援を拡充する方向で検討しています。

 ただ、もっと本格的な生活支援を行うには、NPOなどの市民団体、公益団体、企業、学区社協、自治会、行政、地方議会など、さまざまな組織・機関の協力による重層的な支援態勢づくりが欠かせないと考えます。また避難者同士の協調や相互扶助も大切と言えます。

 今回、府が立ち上げた「地域力再生プラットフォーム会議」は、意欲を持つグループや団体の連携を強め、効果的な支援を実現するための好機といえます。

 こうした連携、ネットワークが東日本の避難者支援だけに止まらず、地域福祉を支援するうえでも貴重な財産として構築できるよう当事業団も積極的に寄与したいと願っています。