ともに生きる・福祉のページ
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「すべての人が快適に」

京都ライトハウス築2年
ユニバーサルデザインを検証
(2006/04/11)


写真 ユニバーサルデザイン(UD)の理念を採用して建設された視覚障害者総合福祉施設「京都ライトハウス」(京都市北区)は、建設後二年を検証するフォーラム「ユニバーサルデザインの展開PARTU」を先月十九日、同ハウスで開いた。利用者、職員、建築設計の技師、京都市関連担当者などパネリストが、各立場から新施設を評価、検証した。さらにフロアの利用者などの意見を交えた討論の場となった。その報告と発言をまとめた。(写真=ユニバーサルデザインによる建築後2年を検証するフォーラム/京都ライトハウス)


 旧ライトハウス(1961年建築)が手狭で老朽化し、98年新築の検討を開始。01年UDへ取り組む委員会を設置。「全ての人が利用しやすく、親しみのある施設」「視覚障害者の動線に配慮し、利用しやすい」を基本とし、18回の協議をした(卯田隆一UD研究会代表)。

動線は縦横のみ

 検討結果を受けた設計は「単純=分かりやすさ」「安全」「快適」「柔軟」と四つの基準を採用。建物の中ほどにエレベーター・階段と吹き抜けをまとめ、各階を南北二ゾーンに分けた。その中央に廊下を設け、動線は縦横のみとするなど分かりやすくしている(内藤建築事務所・藤原賢二さん)。

 完成後、一階入り口の点字ブロックの使われ方を調べたところ、足での踏み方や白杖の使い方が各三種見られ、足と同様に白杖による情報認識の可能性を検討する必要がある(大阪市立大大学院・三浦研助教授)。

 京都市関連では「“すべての人のためのデザイン“とされるUDを市民の半数が知らないのが現状で、昨年4月制定のみやこユニバーサルデザイン条例を紹介する冊子を作成するなど08年までを普及推進期間、09年以降を各主体での取り組み充実期間と設定している」(高田昌香・保健福祉局みやこUD推進係長)。

 利用者代表の一谷孝京都府視覚障害者協会高齢部長はこの2年間で延べ八千人が利用したと前置きし、新館は「どの階も同じ配置で、トイレの位置も同じ。使いやすさは以前とは雲泥の差」と評価。半面で「音楽のクラブ活動で、周囲の雑音が入り込む。また電源スイッチが二種類と不ぞろいで困惑」などと弱点を指摘。

ぬくもり乏しく

 ライトハウス職員の田尻彰さんは「以前から親しまれた場所に建設できた利点が大きい。これを契機に今後一歩でも前進するとの気持ちを継続させたい」と述べた。フロアからは「弱視者用に視認性サインの設置が必要」「障害者の意見や要望をどうしたら反映できるのか」「建物は立派になったが、人と人のふれあいは逆に乏しくなったのでは」という声が出された。

 最後にコーディネーターの高田光雄京都大大学院教授は「利用者がUDに参加する方法と継続的な改善を社会的な仕組みとして、どう実現するかが課題となっている。また人の問題、心の問題は町づくりとともに議論を重ねてゆくのが重要だ」と集約した。

〔メモ〕京都ライトハウス=04年、新築。鉄筋コンクリート地上4階、地下1階。延べ床面積6117平方m。情報ステーション(点字図書館)、情報製作センター(点字出版部)、視覚障害児デイサービス「あいあい教室」、身障者デイサービスセンター「らくらく」、同通所授産施設FSトモニー、ホールなど機能を総合。