ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
やすらぎトーク UP地域の力 暖流 見えない世界を生きる 統合失調症を生きて 福祉ニュース わたしの作品 テーマとーく
福祉ニュースから  <<2006年一覧  2007年>>

大津のグループ 相互協力で開発

助成に頼らない自助具づくり(2006/04/25)


写真 自助具ボランティアグループ「ケアクラフト002(おおつ)」は、設立から8年目の今年度は、財政基盤づくりを課題として、新たな事業に取り組んでいる。地域からの発注品への対応に力を入れ、開発用品の販売、さらには製作品を関連施設で展示紹介するコーナーの新設など新たな活動を展開している。補助金・助成金に頼らずにグループが自立して存続へ、と会員たちは知恵と工夫を集めている。(写真=坂本市民会館の工房で受注品を製作する会員たち)


 同グループは、1999年に大津市の坂本市民会館などで開かれた「福祉用具製作ボランティア講座」の受講者の中から18人が、その直後に集まって結成。現在、会員が約40人に増えている。

 自助具とは体の不自由な人の日常生活を手助けするよう工夫された道具類。同グループは自助具の製作、相談、研究・開発、技術研修を活動内容としている。活動日は坂本市民会館で月2回、2002年7月から龍谷大(瀬田)に第2工房設置に伴い月間4回。  同クラブは設立後、滋賀県県や県内の高齢者団体から助成金をもらい、開発や試作の費用をまかなってきた。ところが05年度から県の助成金がなくなり、財政建て直しの自立路線を迫られた。このため、まず地域からの受注製作へ力点を移し、現在、交通安全の看板「飛び出し坊や」をまとまった量で製作中で、また公的施設が保有する車いすの修理を請け負ったりしている。ついで会員が開発した製品の販売活動を強め、さらに介護施設や病院(大津市内)にクラブの製品を展示紹介するコーナーを新設している。

 会員は元宮大工の赤星真典さんのようなプロはまれで、ほとんどが日曜大工の経験者ていど。各人が関心ある用具を取り上げ、工夫をこらして試作し、必要な場合は相互協力し、個人技とチームワークを組み合わせている。たとえば赤星さんは木工建築では陣頭指揮に立ち、鎌田幸成さんは「ハシ博士」の別名とともに、ばね付きのハシを主に製作する。また濱本孝成さんはステッキホルダーのオリジナル品を開発し、宮田武治さんは「飛び出し坊や」の製作に努め、辻坂浩さんは赤星さんの元で木工作業に従事。佐藤義信さんは古い織機の復元をリードし、介護ヘルパー梅田八千代さんは在宅介護の際の使用実験から貴重な助言を示すなど活躍する。

 塚本良忠さんによれば、同クラブが製作した自助具は昨年度に計41件納品されている。この中で人気ベスト3は(1)つっぱり君(杖ホルダー、定価350円)(2)ばねバシ(3)改造パジャマ。

 一方で会員有志は「自助クラフト倶楽部」を03年に発足させた。日曜大工を延長した格好で、障子・ふすまの張り替え、フロアー改造、内壁補修など地域で求められるさまざまな生活ニーズに対応している。

 岡崎一郎会長(72)は「あれこれと考え、工夫して作ったものを使ってもらえるのは、みんなの最上の喜びです。開発・試作の費用を高齢者や障害者の負担にならないように、新事業に力をいれてゆきたいです」と語っている。

〔メモ〕ケアクラフト002(大津市日吉台1―20―4)TEL077(579)2898。