ともに生きる・福祉のページ
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「竹の里いのち大学」

写真 ニュータウン高齢化の対応模索
交流から連携づくり(2006/06/20)


 京都市西京区の洛西ニュータウン内の温泉を会場に、地域住民が健康や生きがいを考えるユニークな講座「竹の里いのち大学」の第3期が5月から始まった。ニュータウンが開発されて約30年、多くの住民が60、70歳代となり、地域にも老いがしのびよっている。一人暮らしや高齢世帯のサポートが身近な課題となり、講座を主催する住民たちは、地域福祉のネットワークづくりを急いでいる。

 「竹の里いのち大学」は、洛西ニュータウン内の竹の里地域自治連合会の地域づくり委員会(齋藤信男委員長)が主催している。昨年5月に第1期をスタートし、毎月1回、半年間開催、その後第2期を11月から3月まで開いた。

 第1期は総合人間研究所所長で医師の早川一光さんを講師に迎えた。高齢者を取り巻く老いや病気などをテーマに、早川さんのユーモアあふれる話を楽しんだ。第2期は地域医療や介護問題にテーマを広げ、病院や保健所の話を聞いた。参加者は地元を中心に50人前後、多いときは近隣からも含めて100人を超える時もあった。

 風変わりなのが講座の会場。ニュータウン内にあるホテル、京都エミナースにある浴場「竹の郷温泉」の休憩室を借りて開催している。同ホテルの協力で、入浴料込みの受講料は600円。受講者は温泉にも入り、講演とあわせ、1日ゆったり心身を癒している。

 1970年代初めに開発された洛西ニュータウンは、東京の多摩ニュータウン、大阪の千里ニュータウンなどと同じように、開発当初は30、40歳代のサラリーマンらが入居した。その世代もいまは、子どもが結婚したり、独立して夫婦2人きり、あるいはどちらかが亡くなって1人暮らしという世帯が多い。

 高齢化が進行するとともに、ニュータウン内のスーパーや小売店の閉鎖が相次ぎ、地域の交流も薄れてきた。そこで高齢化や福祉問題に専門的に取り組むため、2002年に、自治連合会のなかに設置されたのが地域づくり委員会だった。

 5月からスタートした「いのち大学」第3期は、人気の高い早川さんを初回講師に迎え、その後は栄養士や医師らの話を予定している。委員会ではこの講座を継続して高齢者が自らの健康を考える一方、地域で切実となっている高齢世帯の医療、介護や防災面での助け合いネットワークづくりを検討課題としている。齋藤委員長は「高齢者が多くなっても、元気な地域を作りたい。そのために、どういう交流や協力が必要なのか、他の地域も参考にしながら考えていきたい」という。

 この「いのち大学」について、杉万俊夫京都大大学院人間・環境学研究科教授は、ニュータウンの高齢化問題への取り組みとして関心を示している。杉万教授は長く、鳥取県智頭町で過疎地の活性化を研究してきた。高齢化が進んだ智頭町では住民自治に取り組む運動が約20年前から始まっている。「全国のニュータウンで起こっている少子高齢化からくる問題は、智頭町の都会版だとみることができる。智頭町は住民が求心力を持ち、外の風を使うなどの活動で町が変わった。洛西の「いのち大学」にも、そんな役割を期待したい」と、今後の活動に注目している。