ともに生きる・福祉のページ
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「障害者自立支援法本格実施目前」


京の授産施設に広がる波紋
「意欲失う」と戸惑い(2006/07/18)


 障害のある人の自立を支援する店舗が、京都市内の各所で運営されている。蒸しまん販売、喫茶・レストランなど。知的障害、精神障害のある人たちが自信を持って働き、地域の中で自立をめざしている。そうした中でいま、今年4月から施行された障害者自立支援法が、障害のある人たちに不安を投げかけている。10月からは、障害のある人たちの新たな「利用料負担」や施設の対象も広がる。障害のある人たちが働く店を訪れ、関係者の話を聞いた。

 京都市上京区の京都府庁北側。「まんまん堂 手作りむしまん店」の赤いのぼりが何本も掲げられた店が目につく。ここは知的障害者小規模授産施設上京ワークハウスの共同作業所。障害のある人たち8人が、蒸しまん(夏は別メニュー)を手作りし、店頭販売している。

 上京ワークハウスの利用者らが、自分たちで稼ぎ、自立をめざして2004年10月にオープン。2年の間に固定客もできたという。店長の藤井嘉子さんは「自分たちで、ディスプレーなどにアイデアも出して働いている。いきいきして自信につながっている」と、障害のある利用者の仕事ぶりを語る。

 一方、下京区の寺町電気店街。電気店の並ぶ通りに町家を改装した喫茶店「ジョイント・ほっと」がある。店内はテーブルや内装に木材を使い、やさしいイメージがあふれている。こちらは社会福祉法人てりてりかんぱにぃが運営する精神障害者の小規模通所授産施設。03年6月にオープン。障害のある20人のほかにスタッフ、ボランティアが働く。障害のある人たちは、コーヒー、ランチの準備、接客などに精を出している。電気店の買い物客らも立ち寄り、施設長の吉田久美子さんは「人が多く集まる場所でがんばろうと、やってきた。リピーターも増え、みんな元気に働いている」という。

 こうした店舗で働く人や家族、関係者の間でいま最も心配なことは、今年4月から施行された障害者自立支援法のこと。新たに、共同作業所などで働く障害のある人は、「利用料負担」が必要になった。働いて得た給料(工賃)の中から、利用料を支払うことになる。「少ない給料から利用料を払えばわずかしか残らない。なんのために働いているのか」と働く意欲を失って仕事をやめた人もいて、同法への批判は強い。

 「まんまん堂」や「ジョイント・ほっと」は、10月から同法の対象となる。すでに対象となっている施設や障害のある人たちの厳しい実情を知っているだけに、不安が募るようだ。

 上京ワークハウス所長の田代早苗さんや「ジョイント・ほっと」の吉田さんらは「自立支援法に基づく手続きをするにも、まだ何も要件が示されていない。利用者の家族を含めて学習会を開いているが、作業所が継続できるのか、また利用者負担がどうなるのか、暗中模索の状態」と、悩みをうち明ける。

 窓口となる京都市障害保健福祉課では、「4月から施行されている利用者負担については、京都市は独自軽減策を講じている。10月から実施の地域生活支援事業の利用者負担の詳細は、まだ決まっていないが、施設や利用者らの意見を踏まえて慎重に検討している」と話している。

 10月の本格実施まで残りわずか。4月の施行以降、全国レベルでは利用者負担に対して「働く意欲を失わせる」などの強い批判がある。障害のある人たちや施設関係者らの不安の声は国や自治体に届くのだろうか。