ともに生きる・福祉のページ
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「地域コーディネーター」育成

写真 定年者支援へ近江八幡市社協(2006/07/25)


 近江八幡市社会福祉協議会は、男性の定年退職者への支援策として2年前から独自の「地域コーディネーター」を育成し、シルバー層に向けた地域活動促進の新たな仕組みを作っている。コーディネーターたちは、退職後、家に閉じこもりがちな男性からの相談はじめ活動団体の紹介やボランティア体験の機会を提供するなど、シルバー男性と地域をつなぐ役割を果たしている。定年男性層が急増する時期を迎え、この手法の効果が注目される。

相談や活動団体紹介

 これまで近江八幡市では退職男性への取り組みが充実している。平成13年度から介護予防事業として「仲間づくり講座」などの講座を開催し、その講座から「健康推進友の会」など多彩なボランティアや趣味のグループが次々に結成されている。

 その中で、県社会福祉協議会から委託を受けて市社協が「高齢者エンジョイ地域活動モデル事業」を平成16、17年度の2年間取り組んできた。退職した男性が地域活動に入りやすくする「仕組み」を作り、退職男性と地域を結ぶ「つなぎ役」としてコーディネーターの役割を設定した。

 そのために、昨年1月に「地域コーディネーター養成講座」を3日間開き、地域活動の経験者など約30人が参加。地域ボランティアについての講義や、対人関係のスキル、グループでの対応など基礎的な事柄を研修。この中から当初16人がコーディネーターに任命され、現在は18人。いずれも定年退職者で、男性グループや地域活動の経験者。年齢は60歳から65歳が中心。

 発足直後に相談業務に欠かせない市内の地域活動団体、グループの実情を全員で調べ、情報集約したのをはじめ市民からの相談対応、拠点作り、広報・啓発まで活動している。

 昨年7月には、近江八幡市総合福祉センターひまわり館のボランティアセンターでの定例相談を開設。毎月曜(第5週は除く)午後1時から同3時まで相談を受けている。コーディネーターたちは4、5人で班を組み、月1回の相談を担当している。開設から今年3月まで9か月間にシニア男性19人から相談を受けている。相談に来た人たち全員が地域で活動しているグループや教室、講座、関係機関など紹介され、実際に活動体験や受講などに参加している。

 その一人、青山弘志さん(61)は「退職後、音楽を聞いたり、DVDを見たり一日中、家にこもりきりでした。見かねた妻の勧めで相談に来て、以来、紹介された先でコイやドジョウを料理したり、里山の竹ヤブに入ったりと、生涯初の体験を重ね、自分の住む町からカルチャー・ショックを受けました」と地域再発見の感想を語っている。

 コーディネーターの植田孝司さんは「相談で仲介した団体は自分らの仲間がやっているところだから、責任を持って案内やフォローできる」といい、また同高橋作栄さんは「定年後に自分があちこちで体験したことを相談にそっくり生かせる。同じ世代の仲間が大勢いて、毎日が忙しくて楽しい」と、第2の人生の手応えが十分だ。

 同市社協の職員谷口花菜さんは「この事業によって新たに人と人のつながり、ネットワークができました。相談に来る人がまだまだ少ないので、一歩踏みして出して、もっと身近に気軽に活用されるようにしたいです」と課題をとらえている。

〔メモ〕近江八幡市社協地域コーディネーター
連絡先=近江八幡市社協(近江八幡市土田町1313、近江八幡市総合福祉センター内)
TEL0748(32)1781