ともに生きる・福祉のページ
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「社会的事業所」へ移行

写真 スラッシュ・レゾー(2006/08/01)


タイトル



 4年前、事業所型共同(働)作業所として設立されたスラッシュ・レゾー(米沢大・代表、大津市)は、昨年10月から滋賀県が新規制定した「社会的事業所」へ移行。障害者も健常者もともに働き、社会的・経済的自立をめざす次世代のモデル企業への道を歩み始めている。従来の福祉型就労から一般の雇用契約への切り替えという段階からステップアップし、社会進化している。今後は、福祉と企業活動との新たな協調や事業連携などの可能性と共に、その進路に期待が寄せられている。


適正生かし事業拡大

 スラッシュ・レゾーは、2002年、障害者6人を含む計11人を雇用契約して発足。滋賀県庁内での喫茶店経営、物品販売をはじめとし、この4年間に組織を拡充し、また、さまざまな事業、仕事を開発、手がけている。

 03年には、稲作減反にともなう遊休の畑やビニールハウスを利用する共同作業所「大中アグリの里」(安土町)を開設し、農産物の栽培・即売とともに県委託による外来魚の回収とその有機肥料への加工処理など環境分野へも進出。また第一びわこ学園の洗濯業務を請け負い、さらに立命館大学(草津キャンパス)や飲料メーカーなどと連携し大学構内の空き缶、ペットボトルなど資源ごみの回収・再利用の新たな仕組みを開発した。この方式が各地の自治体や大学で採用されるなど波及成果を上げている。

 この間、米沢代表ら従業員は33人に増え、その内、障害のある人が19人。それぞれの能力、特技などを配慮しながら、適所の仕事に従事し、障害者もそうでない人も一緒に働いている。この結果、昨年の平均賃金が月額15万1700円に達し、一般企業のレベルに近いところへきている。

 売り上げは、ゼロから始まったことから年々倍々という高いペースで増えているが「売り上げや利益が伸びること自体が目的ではなく、障害のある人が安定して働き、一人前の給与を稼いで自立して暮らせるのが本当の目標なんです」というのが米沢さんのスタンス。

 今では従来型と違って利益追求が可能だから、商売も多岐になっていて、昨年実績ではロッカー、書庫など家具販売、プリンターなどIT(情報技術)機器の販売などが売り上げの大部分を占めている。それらのセールスでも障害者が共に加わり、福祉的ケアによる新しい手法を提案するなど特色を出している。

 アグリの里で働く人は8人と最も大人数。夏季はトマトやキュウリ、ナスなど夏野菜の栽培と釣りシーズンによる外来魚の回収の盛期が重なって多忙を極める。それでも従業員たちは、ぎすぎすした人間関係とは大違い。わいわいと会話が弾み、和気あいあい、なごやかな職場を築いている。

 来年には高島市で学校給食や外食の残さを堆肥・肥料にリサイクルする新規事業を計画。雇用創出とともに資源再利用へ取り組む。

 米沢さんは「さまざまな仕事や事業を通じて、地域の人たちや社会人、また大学生など若い世代までふれあいができるように進んできています。障害があろうとなかろうと、人の価値を見いだしていくのは社会的な責務だと思うんです」と進路を示している。

〔メモ〕スラッシュ・レゾー 大津市京町3−5−12 TEL.077(527)9788