ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
やすらぎトーク UP地域の力 暖流 見えない世界を生きる 統合失調症を生きて 福祉ニュース わたしの作品 テーマとーく
福祉ニュースから  <<2006年一覧  2007年>>

子どもを救う村の建設
SOSキンダードルフ・ジャパン(2006/09/19)

写真

 2004年に発足したNPO法人(特定非営利活動法人)「子どもの村を設立する会」(本部・大津市、金子龍太郎代表)は、今年度から名称を「SOSキンダードルフ・ジャパン」と改めた。養育不十分な子どもたちの親に代わって「健全な家庭生活の提供」をめざす国際的な児童福祉組織SOSキンダードルフ・インターナショナル(本部・オーストリア)の日本支部と認証されたことに伴うもの。同会は、これを期に活動を活発化させて、国内の子どもたちを救う村の建設活動を具体化する。



タイトル


 SOSキンダードルフ(ドイツ語で「子どもの村」の意味)は1949年、オーストリアで始まった。第二次世界大戦などで親を失ったり、養育放棄された子どもを複数の家から成る「村」に引き取り、親代わりの職員が一緒に暮らして、その成育と自立を支援する。

 現在、世界132カ国に子どもの村444カ所が設けられ、約48,000人が暮らしている。支部は欧米各国はもとより、アジアでは中国、韓国、タイ、フィリピン、ネパールなど主要国で「村」が開設されている。日本では過去2回、設立の動きがあったが、資金難など行き詰まっている。

 日本支部は現在、京都府内に子どもの村の建設用地を確保し、福岡県でも建設のための組織化が進んでいる。建設資金の確保のために団体正会員、賛助会員団体の募集を始めたところで、すでに京都、東京の複数の企業が会員登録を済ませている。  最終構想では全国に、子どもの村十数カ所開設。各村は10軒ていどの家を集め、子ども約50人が生活する。家には親代わりの職員が住み込み、村には医療・心理職、ソーシャルワーカーなどの専門スタッフを備えるという。当面、第一号の村は、資金面を考慮して、2、3軒の家に子ども数人ていどで、可能ならば3年後の立ち上げを見込んでいる。

 当初の運営としては、住み込み職員を里親として認めてもらうなど現行の里親制度を援用しながら、民間の募金、援助によりサポートする。

 この2年間、同団体は、子どもの村の理念を伝える会報の発行、講演会開催、さらには世界各地の村の事例調査など村つくりへの準備活動をすすめてきた。また京都事務所を京都市下京区の「ひと・まち交流館」2Fの市民活総合センター内に最近設けている。

 一方、全国の児童相談所が児童虐待に対応した件数は昨年度に34,451件(前年度からの繰り越し分を含む。厚生労働省集計)と過去最高に達しているが、金子龍太郎・同NPO代表は「虐待や育児放棄の実態は、これ以上に潜在していて、今後とも対応件数が減ることは期待できにくいでしょう」と指摘。ついで「都市周辺の養護施設は、多くのところが満杯になり、また里親制度ものび悩んでいるのが実情です」と続ける。

 さらに「子どもが本来は、安心して暮らせるはずの家庭の環境が破壊されていることが根本の問題。子ども村建設は、そんな行き場のない子どもたちにとって新しい受け皿になり、子どもに再び家庭を提供し、長期的に総合的に解決していく事業なのです」と説明し、民間の広い協力を訴えている。

〔メモ〕SOSキンダードルフ・ジャパン
大津市瀬田 龍谷大学社会学部金子研究室 TEL・ファクス077(544)7209