ともに生きる・福祉のページ
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高齢者への虐待防げ


「高齢者虐待防止法」の施行を受けて開かれたシンポジウム(大津市)

本年度から法施行
大津でシンポ(2006/10/10)

 「高齢者虐待防止法」の今年度からの施行を受けて、滋賀県と特定非営利活動法人あさがお(大津市)は、「高齢者虐待防止シンポジウム」を、大津市のピアザ淡海で、このほど開いた。「同法の狙いと目指すもの」を探る趣旨で、福祉関係者らシンポジストが、歩み出したばかりの同法について、法律上の問題点から介護保険の実務側の関わり方、市町村の地域包括支援センターの実態、あるいは成年後見制度の活用事例などの報告や討論を行った。会場には介護関係者や県民など約230人が参加し、高齢社会の中の深刻な問題への認識を深めた。


法律・実務 課題多く

 同法は今年4月に施行。65歳以上の高齢者に対して家庭と養介護施設での虐待を防止し、養護者の介護負担の軽減など支援するのが骨子。虐待を身体的虐待、長時間放置など5種類に定義。虐待の早期発見、通報の義務を定め、また関係機関による立ち入り調査、警察の協力、高齢者の一時保護などの措置を地方自治体に課している。

 冒頭の講演は、同法の制定へ研究会を作って推進してきた柴尾慶次・特別養護老人ホーム「フィオーレ南海(大阪府)」施設長が同法のあらましを解説。2000年「児童虐待防止法」、01年「DV(ドメスティックバイオレンス)防止法」に次いで06年「高齢者虐待防止法」が制定され、米国の法制定と時間差があるものの同じ流れ、と指摘。
 新法の課題として▽65歳以上という適用年齢▽虐待者が養護者と養介護施設従事者に限定されているが、そのほかの第三者を含まないでいいか▽警察の協力は実際上困難な点を含んでいる、などと多くの問題点を挙げた。

 ついで、法の目指すものとして▽安心、安全、快適な街づくり▽認知症ケアを含むコミュニティーの体制づくり▽地域の個人や組織ができる課題から取り組む▽施設内虐待は体制整備が不可欠などと話した。

 シンポジストの藤川潤さん(大津市・まごころ滋賀居宅介護支援事業所)は、ケアマネジャーの現場から「まず第一に介護者のよき相談相手になること、できるだけ早く対応することを心がけ、その上で地域福祉のネットワーク作りへの役割を果たしていきたい」と話した。福永昌代さん(近江八幡市高齢・障がい生活支援センター)は「高齢者と障害者の総合的な窓口として4月にセンターを開設し、5か月間で虐待相談が9件。うち5件で介護者負担の軽減を行い、2件は入院など保護した」などと報告。

 また山内克仁さん(木之本町社会福祉協議会)は「経済的な虐待は家族・親族だけでなく福祉関係者や悪徳業者などまであるので、日常的な金銭管理サービスなど地域福祉権利擁護事業や後見人制度の利用を積極的に進めている」と取り組みの現状を伝えた。

 最後に柴尾さんが「高齢者虐待の8,9割は認知症者にかかわるもので、取り組みの軸を地域に確立するのがポイント。遠いようだが近い道。決してむずかしい問題ではない」と締めくくった。

〔メモ〕特定非営利活動法人あさがお
連絡先 大津市浜大津3―2―4、TEL.077(522)0799